11. 輸血によるウイルス感染を輸血前後の保管検体で確認した1症例

【はじめに】今回我々は, 輸血が原因でウイルス感染が疑われた患者について, 輸血前後の保管血液の検査を行うことでウイルス感染を確認したので報告する. 【方法】当院では, 平成11年8月から赤血球輸血を行う患者全例の輸血前の血液を保管し, 輸血副作用の調査試料としている. 保管方法は, 交差適合試験に使われた残余の血漿をプラスチック試験管に移し変え, -80℃の冷凍庫で約2年間冷凍保管している. 現在では, 交差試験中にウイルスが混入しないよう, 交差試験前の段階で保管用試験管に小分けしている. 保管検体は, 試験管に患者氏名, 診療科, 交差試験日, 血液型を記載して, 交差試験を実施した順番...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 2006, Vol.52 (1), p.62-63
Hauptverfasser: 友田豊, 渋佐琴恵, 遠藤玲美, 紀野修一, 葛西眞一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【はじめに】今回我々は, 輸血が原因でウイルス感染が疑われた患者について, 輸血前後の保管血液の検査を行うことでウイルス感染を確認したので報告する. 【方法】当院では, 平成11年8月から赤血球輸血を行う患者全例の輸血前の血液を保管し, 輸血副作用の調査試料としている. 保管方法は, 交差適合試験に使われた残余の血漿をプラスチック試験管に移し変え, -80℃の冷凍庫で約2年間冷凍保管している. 現在では, 交差試験中にウイルスが混入しないよう, 交差試験前の段階で保管用試験管に小分けしている. 保管検体は, 試験管に患者氏名, 診療科, 交差試験日, 血液型を記載して, 交差試験を実施した順番にフリーズコンテナに保管する. そのため, 検体の検索は輸血システムを使って患者IDから輸血履歴を調べることで可能となり, 交差試験日から保管血液を探し出せる. この方法を用いると, 頻回輸血患者では, 交差試験の都度血液が保管されるため, 結果的に輸血後の血液保管もかねている. 【症例】60歳代男性, 非ポジキンリンパ腫のため頻回の輸血が行われていた. ウイルス伝播の原因ドナーは, 30歳代男性で, 2004年9月に2回の血小板献血を行っていた. 2回目の献血時に肝機能検査で異常が見つかり, HEV NATが陽性であった. このため, 1回目の血液を遡及調査すると, この血液からもHEV-RNAが検出され, その血液が輸血されていた. 輸血部で保管してある患者の血液を調査すると, 輸血を境に献血者と同じ遺伝子型を持つHEV-RNAが検出され, 輸血からの時間経過とともに, ウイルス量が次第に増加していた. 【考察】本症例は, 輸血前後の保管血液を調査することで, 輸血によるHEV伝播が確実に証明でき, 感染被害者救済制度の第1号に認定された. 輸血前後の患者血液の保管は, 輸血副作用の調査やウイルス感染の証明には必須であり, 本例からその重要性を再認識した. 今後, 血液の保管対象を, 輸血予定患者全例に広げ, 患者が安心して輸血を受けられる体制を整えたい.
ISSN:0546-1448