P134 重篤な輸血副作用を起こしたDi(b-)の一症例

【緒言】不規則性抗体の中には時間経過とともに抗体価が低下し検査で検出できなくなるものがあり, 遅発性溶血性副作用の原因となることが知られている. 今回我々はまれな血液型Di(b-)の患者で, 検出限界以下となった複数の不規則性抗体が関与した重篤な輸血副作用を経験したので報告する. 【症例】84歳男性. 2003年8月11日膀胱癌疑いで入院. 20年前輸血既往歴あり. 入院時Hb7.8g/dLと貧血を認めたが生化学データは正常. 血液型B型Rh(+), 不規則性抗体スクリーニングで抗E抗体を検出. 貧血改善を目的として8月19日から22日にE抗原陰性MAP8単位輸血. この時点では異常を認めなか...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 2004, Vol.50 (2), p.335-335
Hauptverfasser: 加藤正輝, 岸本美穂, 若林真理, 太子やえ, 武田啓, 岡本隆弘, 早川郁代, 西村千恵, 坊池義浩, 石谷まさ子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【緒言】不規則性抗体の中には時間経過とともに抗体価が低下し検査で検出できなくなるものがあり, 遅発性溶血性副作用の原因となることが知られている. 今回我々はまれな血液型Di(b-)の患者で, 検出限界以下となった複数の不規則性抗体が関与した重篤な輸血副作用を経験したので報告する. 【症例】84歳男性. 2003年8月11日膀胱癌疑いで入院. 20年前輸血既往歴あり. 入院時Hb7.8g/dLと貧血を認めたが生化学データは正常. 血液型B型Rh(+), 不規則性抗体スクリーニングで抗E抗体を検出. 貧血改善を目的として8月19日から22日にE抗原陰性MAP8単位輸血. この時点では異常を認めなかったが, 8月28日E抗原陰性MAP2単位を輸血中, 呼吸困難, 頻脈, 血圧上昇が出現し輸血を中止した. 輸血中止後の検査では, T-Bil8.8mg/dL, AST204U/L, CK1065U/L, LD1253U/Lと上昇しており溶血や心筋梗塞を疑った. また抗E抗体に加え抗Jkb抗体を検出したため, 輸血後副作用と考え血液センターに報告し精密検査を実施した. 【結果】患者血液型はB型, CCDee, Jk(a+b-), Di(a+b-). 不規則性抗体は抗E抗体に加え輸血後6日目(8月25日)に抗Jkb抗体, 輸血後9日目(8月28日)に抗Dib抗体を検出した. 副作用発生後の直接抗グロブリン試験は陽性で, 血球解離液は間接抗グロブリン法で抗Jkb抗体と抗Dib抗体の反応を示した. また輸血後検体から輸血前は陰性であったclassI, classIIに対する抗HLA抗体を検出した. 【考察】本症例は, 検出限界以下であった2種類の不規則性抗体の抗体価が輸血による二次免疫応答で上昇し, 溶血性副作用を引き起こしたと思われ, 抗HLA抗体による非溶血性副作用も加わり症状が重篤化した可能性がある. 輸血既往歴のある患者では, 遅発性溶血性副作用や抗HLA抗体による非溶血性副作用を生じる可能性を念頭におき輸血後の注意深い観察が必要と思われた.
ISSN:0546-1448