血液製剤使用量の削減をめざした救急医療における輸血戦略

【背景と目的】血液製剤の適正使用が叫ばれる一方で, 救急医療領域では「患者の救命」という大義名分のもとで, 大量の血液製剤資源を消費してきたことは否めない. 救急医療領域においても常に血液製剤使用の現状を分析し, 使用の適正化と使用量の削減を目指す努力が必要と考える. 我々は救命救急センターにおける血液製剤の過剰使用への反省から, 輸血戦略の変更を行い, 多発外傷患者を含めて血液製剤の使用量の減少がどこまで達成できるかを検証しているのでその結果を報告する. 【対象と方法】1997年5月から, 輸血戦略として以下の方針を実践している. (1)輸血トリガー値を従来の10/30ルールを破棄して, H...

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Hauptverfasser: 小関一英, 布施明, 今明秀, 福田聖恵, 松本千織
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【背景と目的】血液製剤の適正使用が叫ばれる一方で, 救急医療領域では「患者の救命」という大義名分のもとで, 大量の血液製剤資源を消費してきたことは否めない. 救急医療領域においても常に血液製剤使用の現状を分析し, 使用の適正化と使用量の削減を目指す努力が必要と考える. 我々は救命救急センターにおける血液製剤の過剰使用への反省から, 輸血戦略の変更を行い, 多発外傷患者を含めて血液製剤の使用量の減少がどこまで達成できるかを検証しているのでその結果を報告する. 【対象と方法】1997年5月から, 輸血戦略として以下の方針を実践している. (1)輸血トリガー値を従来の10/30ルールを破棄して, Hb値8g/dl, Ht25%に下げた. (2)FFP投与は, 赤血球MAP10単位以上を要した大量輸血例と肝硬変を伴った出血例における凝固因子補充目的に限定し, 血漿蛋白維持や循環血漿量の回復目的の投与を禁止した. (3)緊急輸血大量出血例であってもすべて照射血を使用し, 新鮮血, 生血は使用しない. この戦略を開始する以前の2年間(1995年5月~1997年4月:前期)をcontrolとして, それ以降(1997年5月~1999年4月:後期)で, 赤血球MAP, FFP, 濃厚血小板製剤(PC)の発注量, 実使用量, 輸注患者数, 予後を比較した, 【結果】(1)赤血球MAP使用量は, 後期は前期の約70%, FFP使用量は, 後期は前期の約35%に著減した. (2)対象症例に占める輸血施行率は前期13. 5%から, 後期9%に, 同様に, FFP輸注率は17%から7%と減少した. (3)最近3年間の調査でもこの傾向は変わらず, とくにMAP血のCT比は1.43と, 院内他科の平均1.51に比べてむしろ低値である【結論】多発外傷例の頻度が高い救命救急医療においても, 血液製剤の使用戦略を明確かつ厳密にすることで, 赤血球MAPおよびFFPの使用頻度と使用量を大幅に削減できることが証明された.
ISSN:0546-1448