P-003 Auto VueでPara-Bombay Bmh型が検出された一例

(はじめに)当院ではOrtho Auto Vue System(以下AVと略す)を使用して血液型検査を行っている. 今回表裏不一致からRace&Sangerの分類によるRowIIIに属するPara-Bombay Bmh型と考えられる一例を経験したので報告する. (症例)62歳, 女性, Parkinson病にて外来通院中. 妊娠歴3回, 輸血歴無し. (結果)AVでは抗A(O)抗B(O)Al血球(2+)B血球(O)であった. 用手法にて精査したところ, 血球の反応はモノクローナル抗A, 抗B, 抗AB血清及び人由来抗A, 抗B血清との反応は全て陰性, さらに抗A1(Dolichos), 抗H抗体(Ulex, ツルレイシ)とも全て陰性であった. 人由来抗B, Ulex抗H抗体を用いた吸着解離試験では解離液中に抗B, 抗H抗体を証明することができた. 血漿中には抗A抗体以外にB, O血球両者に対して食塩水法(室温, 4℃)で反応する抗体が認められた. この抗体をO, B, Oiadult, Ocord, Bcord血球及びO型分泌型唾液を用いて特異性を調べた結果, 抗HI抗体と判定した. さらに血漿中にはB型転移酵素が認められた. 唾液中にはB及びH型物質を分泌していた. その他, 主な血液型は, CcDEe, Le(a-b+), Pl(-), MNss, Fy(a+b-), Jk(a+b+), Di(a-b+), Lu(a-b+), Jr(a+), Xg(a+)であった. (考察)以上の結果から低温反応性の抗HI抗体をもつPara-Bombay Bmh型と判定した. 今後, 家系調査をおこなう予定である. 抗H抗体に反応しない亜型としてBombay, Para-Bombay型がある. AVで血液型検査を行う場合, O型血球を対照として使用していないためBombay型などは検出されないが, Para-Bombay型では表裏不一致として検出される場合があることがわかった. Bombay型は不規則性抗体検査や交差適合試験の際検出されると思われる. AVによる血液型検査のみで検出されない亜型に対して今後どのように対応すべきか検討する必要がある.