O-024 人工心肺使用心臓外科手術患者における血小板機能低下とその止血対策

手術手技や麻酔方法等の進歩にともない, 心臓血管外科手術は比較的安全となってきた. しかし, 依然として術中術後の出血傾向は重大な問題として残されている. その主因として, 人工心肺装置が挙げられる. 人工心肺が直接, 血小板数, 血小板機能低下, 線溶亢進, 凝固因子減少に影響を与えることが指摘されている. この中で最大の原因とされているのが血小板機能障害である. しかし現在もなお, どのように血小板機能が障害されるのか統一された見解がなく, 臨床的に人工心肺を用いた手術での血小板機能をモニターするための十分なシステムがいまだ存在しない. したがって, 人工心肺使用手術では確たる基準がない状...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 2002, Vol.48 (2), p.138-138
Hauptverfasser: 宮田茂樹, 河合健, 山本賢, 吉村尋典, 岩谷泰之, 森勝志, 高田雅弘, 亀井政孝, 畔政和
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:手術手技や麻酔方法等の進歩にともない, 心臓血管外科手術は比較的安全となってきた. しかし, 依然として術中術後の出血傾向は重大な問題として残されている. その主因として, 人工心肺装置が挙げられる. 人工心肺が直接, 血小板数, 血小板機能低下, 線溶亢進, 凝固因子減少に影響を与えることが指摘されている. この中で最大の原因とされているのが血小板機能障害である. しかし現在もなお, どのように血小板機能が障害されるのか統一された見解がなく, 臨床的に人工心肺を用いた手術での血小板機能をモニターするための十分なシステムがいまだ存在しない. したがって, 人工心肺使用手術では確たる基準がない状況で, 新鮮凍結血漿, 血小板等を輸血し止血を行っているのが現状である. このため, 院内採血による新鮮血(生血)信仰があり, 当センターでも輸血療法の安全性確保上大きな問題となっていた. 近年, 血小板機能評価の際に, 生体内で血小板が存在する環境である流動状況を考慮する必要性が指摘され, ずり応力下血小板機能評価の概念が確立されつつある. 今回この概念をもとに, 人工心肺使用患者におけるex vivo実験系でのずり応力下血小板機能測定を実施した. その結果, 高ずり速度(1500/s)下での血小板粘着, 血栓形成能は人工心肺使用時の血小板機能低下を良好に反映した. すなわち, 術中, 術後の出血量に対して, 血小板数およびフローサイトメターによる血小板レセプター測定と比較して格段良好な相関を示した. この方法で術中の止血機能をモニタリングし適切な血小板輸血を行うことで, 現在, 当センターで院内生血の使用はなくなった. 従って, 出血傾向に対処するためには, 外科医, 麻酔科医の主観や経験ではなく, 人工心肺による血小板機能障害の程度を考慮に入れながら予測, 治療することが肝要であり, 適切な血小板輸血を実施することで, 院内生血を使用することなしに人工心肺による止血困難を克服することが可能であると考える.
ISSN:0546-1448