輸血後バベシア症の本邦第一例
欧米ではウシやげっ歯類に寄生するバベシアのヒトヘの感染例が数百例報告されている. 本邦でヒトのバペシア症の報告はなかったが, 今回, 発熱性溶血性貧血の患者からBabesia microti類似の原虫が証明され, さらに感染源として輸血の可能性が考えられた事例を経験したので報告する. 「症例」40歳, 男性, 生来健康で手術歴, 輸血歴, 海外渡航歴, 牧畜作業, 野外活動などなし. 平成10年12月28日胃潰瘍による大量出血でA病院に緊急入院となり, RC-MAP 12u,FFP3u(ドナー8人)の輸血後1月9日軽快退院. 同月31日より発熱, 赤色尿および貧血のため2月6日A病院に再入院....
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Zusammenfassung: | 欧米ではウシやげっ歯類に寄生するバベシアのヒトヘの感染例が数百例報告されている. 本邦でヒトのバペシア症の報告はなかったが, 今回, 発熱性溶血性貧血の患者からBabesia microti類似の原虫が証明され, さらに感染源として輸血の可能性が考えられた事例を経験したので報告する. 「症例」40歳, 男性, 生来健康で手術歴, 輸血歴, 海外渡航歴, 牧畜作業, 野外活動などなし. 平成10年12月28日胃潰瘍による大量出血でA病院に緊急入院となり, RC-MAP 12u,FFP3u(ドナー8人)の輸血後1月9日軽快退院. 同月31日より発熱, 赤色尿および貧血のため2月6日A病院に再入院. 再入院時Hb5.2g/dL,T. Bi12,7mg/dL,LDH57401U/L,CRP11.5mg/dL, 末梢血中赤芽球(+)および脾腫より溶血性貧血の診断にて副腎皮質ホルモンの大量投与を受けたが, 再燃を繰り返すため5月7日B病院に転院となり, 血液塗沫標本で多数のマラリア様原虫が認められた. 患者はキニーネとクリンダマイシンの投与により速やかに改善し, 原虫は16SリボソームRNAについてのPCRの結果Babesia microti(含近縁種)と同定された. 一方, 8人のドナー保管検体についてPCRを試み, 1名の血液から患者血液に検出されたものと同じPCR産物が得られ, また, 間接蛍光抗体法で抗バベシア抗体が強陽性を示した. さらにドナー新鮮血の動物接種試験でバペシアの増殖を認めた. 以上よりこのドナーはキャリア状態で献血し, その血液によりバペシアの伝搬された可能性が考えられた. このドナーは海外渡航歴, 野外活動を始めダニ刺症, 感冒様症状など認めなかった. 「考察」本邦でヒトバベシア症報告はないが, アカネズミはバベシアに感染していると報告されており, 不顕性感染あるいは軽微な症状のため見落とされていた可能性もあろう. 今後, 人獣感染症において血液の安全性に対しては世界的動向に注目し調査・検討を考慮する必要がある. |
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ISSN: | 0546-1448 |