ヒトパルボウイルスB19の病原性発現分子機構

ヒトパルボウイルスB19は1975年に献血者の血液中に偶然発見されたウイルスである. きわめて小型(直径20nm)でエンヴェロープを持たないという構造的特徴から, 有機溶媒や界面活性剤に抵抗性を示し, また膜による除去や加熱による不活化も困難であるため, 近年血漿分画製剤中へのB19の混入が問題となってきている. B19による感染症としては小児の伝染性紅斑, 溶血性貧血患者のaplastic crisis, 妊婦の胎児水腫などがよく知られているが, 多発性関節炎あるいは慢性関節リウマチとの因果関係も示唆されている. B19ウイルスはカプシド中に5.6kbの一本鎖DNAを持つが, そのDNAには...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 1998/06/01, Vol.44(3), pp.349-351
Hauptverfasser: モファット, スタンレー, 八重樫, 伸生, 菅村, 和夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:ヒトパルボウイルスB19は1975年に献血者の血液中に偶然発見されたウイルスである. きわめて小型(直径20nm)でエンヴェロープを持たないという構造的特徴から, 有機溶媒や界面活性剤に抵抗性を示し, また膜による除去や加熱による不活化も困難であるため, 近年血漿分画製剤中へのB19の混入が問題となってきている. B19による感染症としては小児の伝染性紅斑, 溶血性貧血患者のaplastic crisis, 妊婦の胎児水腫などがよく知られているが, 多発性関節炎あるいは慢性関節リウマチとの因果関係も示唆されている. B19ウイルスはカプシド中に5.6kbの一本鎖DNAを持つが, そのDNAには2つのオープンリーディングフレーム(ORF)が存在する. 3側のORFは構造蛋白VP1(84kD)とVP2(58kD)をコードしており, この2種の蛋白が約1:9の割合の組み合わせでウイルス粒子(カプシド)を構築する. 一方5側のORFは77kDの非構造蛋白NS1をコードしている. NS1はウイルスの複製に必須であるばかりではなく, 自身の唯一のプロモーターp6からの転写を活性化したり, 細胞増殖の抑制や細胞障害を引き起こすことが知られている.
ISSN:0546-1448
1883-8383
DOI:10.3925/jjtc1958.44.349