献血者より検出された抗HTLV-I抗体陽転化症例の検討
輸血によるHTLV-Iの感染がHTLV-I抗体陰性血を用いることで有効に阻止されるとの大河内らの報告を基に, 血液センターでは1986年より抗体スクリーニングが開始された. 西村らもまたスクリーニング後の追跡調査により輸血後の陽転化症例がないことを報告している. しかし我々は献血者の前回献血歴調査により, 毎年数例から10数例の輸血歴を有しない陽転化症例を検出している. 今回これらの症例について検討したので報告する. 対象および方法:1990年4月から1995年8月までの, 前回HTLV-I抗体陰性から, 今回, PA法IF法が陽性となった症例を対象とした. PA法は用書どおりとし, IF法は...
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Veröffentlicht in: | 日本輸血学会雑誌 1997, Vol.43 (6), p.1013-1013 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 輸血によるHTLV-Iの感染がHTLV-I抗体陰性血を用いることで有効に阻止されるとの大河内らの報告を基に, 血液センターでは1986年より抗体スクリーニングが開始された. 西村らもまたスクリーニング後の追跡調査により輸血後の陽転化症例がないことを報告している. しかし我々は献血者の前回献血歴調査により, 毎年数例から10数例の輸血歴を有しない陽転化症例を検出している. 今回これらの症例について検討したので報告する. 対象および方法:1990年4月から1995年8月までの, 前回HTLV-I抗体陰性から, 今回, PA法IF法が陽性となった症例を対象とした. PA法は用書どおりとし, IF法は報告に記載されている方法に準じた. 陽転化については旧PA試薬のプロゾーン現象を考慮し, 改良PA試薬に変更した1990年4月以前が前回陰性の群(A群)と以後が前回陰性の群(B群)に分けて以下の調査を実施した. 一部の検体についてIgM抗体検出のためW. B法とゲル濾過分画によるPA法を検討し, プロウイルス検出のためPCR法を試みた. 結果:陽転化症例は対象期間中60例検出され, A群33例, B群27例であった. A群は男性4例, 平均年齢35.8歳, 女性29例, 平均年齢42.8歳, B群についても同様に, 男性5例, 平均年齢34.6歳, 女性22例, 平均年齢42.1歳であった. 輸血歴は全員なかった. W. B法によるIgM抗体はA群に於いて, 4例中3例, P19に対するバンドのみが検出され, 判定保留とした. B群に於いては4例中2例同じくP19に対するバンドのみが検出され, 判定保留とした. ゲル濾過分画によるPA法は, A, B群で10例中9例がIgM分画でPA法低力価陽性を示したが, 同時に検討したHTLV-I抗体継続陽性検体ではIgM分画陰性であった. PCR法はA群で7例中6例が陽性であり, B群については4例中4例が陽性となった. B群についてはさらに検討中である. 考察:HTLV-Iの水平感染については夫婦を対象として調査した結果が報告されている(柏木ら, 権ら). 彼らによれば感染は殆ど夫から妻に起こり, 陽転化は妻の年齢が高いほど増加している. 血液センターでは現在陽性者に対して通知を行っておらず, 今回の我々の調査も陽性者への影響を考慮し献血者の背景に付いては調査できなかった. しかし, 陽転化症例の全例が輸血歴がなく, 殆どが女性であること, 年齢も高いこと, IgM抗体の検出, プロウイルスの証明により, 献血者におけるHTLV-Iの水平感染の存在が示唆された. |
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ISSN: | 0546-1448 |