稀な抗Fy^a 抗体の不適合輸血

稀なDuffy(a-)血液型において不適合輸血を経験したので報告する. 症例:患者は48歳, 女性. 妊娠歴有, 直腸癌. 1992. 3. 20:入院時検査;A, Rho(+), 不規則抗体(-). 4. 16~20:直腸切断術の術中, 術後に赤血球MAP18単位, FFP24単位を輸血. 5. 22:MAP2単位を輸血, 不規則抗体(-). 6. 3~5:MAP4単位を輸血, 不規則抗体(-). 1995. 3. 20:放射線治療による貧血のためMAP4単位を輸血, 不規則抗体(-). 4. 20:抗Fy^a 抗体を同定. 適合血(解凍赤血球)を4単位輸血. 検査成績:1995. 3. 2...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 1997, Vol.43 (6), p.1006-1007
Hauptverfasser: 野田衣都子, 久田正直, 田中美妃, 師岡津代子, 鵜池直邦
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:稀なDuffy(a-)血液型において不適合輸血を経験したので報告する. 症例:患者は48歳, 女性. 妊娠歴有, 直腸癌. 1992. 3. 20:入院時検査;A, Rho(+), 不規則抗体(-). 4. 16~20:直腸切断術の術中, 術後に赤血球MAP18単位, FFP24単位を輸血. 5. 22:MAP2単位を輸血, 不規則抗体(-). 6. 3~5:MAP4単位を輸血, 不規則抗体(-). 1995. 3. 20:放射線治療による貧血のためMAP4単位を輸血, 不規則抗体(-). 4. 20:抗Fy^a 抗体を同定. 適合血(解凍赤血球)を4単位輸血. 検査成績:1995. 3. 20:直接抗グロブリン試験(1+^w ), 抗体解離試験(-), 不規則抗体(-)であることから, 薬剤によるものと推測された. 同年. 4. 20:間接抗グロブリン試験は(3+^s )で抗Fy^a 抗体(抗体価1:8)を同定. 更に直接抗グロブリン試験が(2+), 抗体解離試験(2+^s )により抗Fy^a 抗体を同定. その他の血液型:CcDEe, Fy(a-b+), Jk(a+b-), MMss, Le(a-b+), Xg(a+), Di(a-) 考察:3月20日の輸血にてHb値は改善するも, その後2週間目には既に低下がみられ, Bil値及びLDH値は僅か上昇, また輸血後8日目から約2週間血尿(希血尿)がみられたが, 溶血性副作用を確証する所見・検査成績は認められなかった. 検査結果は血清中及び赤血球上からも抗Fy^a 抗体を認めたが, Kidd血液型でもみられるように免疫同種抗体が産生されるも, 経時的に抗体価が低下したところへ二次免疫されたことにより, 残存する輸注血液に抗体が感作しているものと判断し, 適合血(解凍赤血球)を輸血. 翌朝, 近医紹介退院のためその後の経過は不明. まとめ:今回は, 抗Fy^a 抗体が輸血副作用の原因となる確証は得られなかった. しかし, 日本人におけるFy(a-)適合率は1%以下と稀であり, 適合血確保には解凍赤血球より選択する以外にない. このような稀血の場合, その量や時間的猶予によっては困難を生じかねない. そのためにも不規則抗体スクリーニングは, 輸血予定前に時間的余裕(数日)をもって行うことが賢明である. 更に輸血による抗体産生の可能性も念頭において, 輸血歴のある患者については必ず輸血直前の検体にてその都度スクリーニングを行う必要があり, これらの検査態勢が円滑な輸血治療に貢献するものと痛感させられた.
ISSN:0546-1448