心臓外科領域における自己血輸血
近年の手術成績の向上に伴い, 心臓外科領域においても焦点は手術の成否から遠隔期の質的向上に移りつつある. 同種血輸血を手段として用いてきた心臓外科手術において, 輸血感染症はその質的向上を図る上での大きな問題点の一つであり, 同種血輸血の回避や節減は必然的に自己血輸血の普及を推進した. 1. 心臓外科領域における自己血輸血 体外循環装置を補助手段として用いる心臓外科手術(開心術)では, 人工肺や回路への液充填が必要であり, また全身ヘパリン化と体外循環駆動に起因する血液成分破壊, 凝固因子消耗により術中, 術後の出血は助長される. また手術対象が心臓, 血管という血液を内蔵する臓器であるため,...
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Veröffentlicht in: | 日本輸血学会雑誌 1996/03/01, Vol.42(1), pp.44-47 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 近年の手術成績の向上に伴い, 心臓外科領域においても焦点は手術の成否から遠隔期の質的向上に移りつつある. 同種血輸血を手段として用いてきた心臓外科手術において, 輸血感染症はその質的向上を図る上での大きな問題点の一つであり, 同種血輸血の回避や節減は必然的に自己血輸血の普及を推進した. 1. 心臓外科領域における自己血輸血 体外循環装置を補助手段として用いる心臓外科手術(開心術)では, 人工肺や回路への液充填が必要であり, また全身ヘパリン化と体外循環駆動に起因する血液成分破壊, 凝固因子消耗により術中, 術後の出血は助長される. また手術対象が心臓, 血管という血液を内蔵する臓器であるため, 開心術は最も輸血の頻度, 必要量が大きい手術の一つである. 種々のスクリーニングによっても肝炎, AIDSなどの輸血感染症発生は皆無とは断言し得ない. C型肝炎(当時は非A非B型肝炎と診断)の蔓延とほぼ同時期に心臓外科学の主たる学会組織である日本胸部外科学会の全国調査により輸血手術63,257例で96例, 約659例に1例の割合でGVHDが発症していることが報告され1), 1988年に日本輸血学会から日本胸部外科学会に新鮮血, 血小板製剤の使用制限, 新鮮血の使用前放射線照射とともに自己血輸血の推進が提案された. |
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ISSN: | 0546-1448 1883-8383 |
DOI: | 10.3925/jjtc1958.42.44 |