宮崎県の献血者における抗HTLV-I抗体陰性キャリアーのスクリーニング

抗HTLV-I抗体陰性キャリアーの存在を示唆する報告が小児において一部散見され(Saito et al., Jpn J Cancer Res, 1989, 80, 808-812), またラットの系においても抗HTLV-I抗体陰性キャリアーが認められている(Ishiguro et al., J Exp Med, 1992, 176, 981-989). 抗HTLV-I抗体陰性キャリアーの存在は抗HTLV-I抗体陽性献血者が多い地区において特に問題になると思われる. そこで今回われわれは抗HTLV-I抗体が高頻度に陽性である宮崎県の献血者(抗HTLV-I抗体陽性率が約4%)において抗HTLV-I...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 1995, Vol.41 (1), p.113-114
Hauptverfasser: 近藤誠司, 秋林建, 大瀧幸哉, 三代典子, 梅木一美, 佐藤美恵子, 新宮世三
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:抗HTLV-I抗体陰性キャリアーの存在を示唆する報告が小児において一部散見され(Saito et al., Jpn J Cancer Res, 1989, 80, 808-812), またラットの系においても抗HTLV-I抗体陰性キャリアーが認められている(Ishiguro et al., J Exp Med, 1992, 176, 981-989). 抗HTLV-I抗体陰性キャリアーの存在は抗HTLV-I抗体陽性献血者が多い地区において特に問題になると思われる. そこで今回われわれは抗HTLV-I抗体が高頻度に陽性である宮崎県の献血者(抗HTLV-I抗体陽性率が約4%)において抗HTLV-I抗体陰性キャリアの有無を検討した. 方法および対象:1993年6月から8月までの宮崎赤十字センターにて400ml採血を行った献血者のうち抗HTLV-I抗体陰性の1,101名を対象とした. HTLV-Iプロウイルスの有無は, nested double PCR法にて検討した. プライマーはHTLV-Iのpx領域を増幅するもので, 第1回目がPX-1(5-AGGGTTTGGACAGAGTCTTC-3), PX-2(5-AAGGACCTTGAGGGTCTTAG-3), 第2回目はPX-3(5-CTTTCGGATACCCAGTCTAC-3), PX-4(5-GATAAGGAACTGTAGAGCTG-3)を用いた. 55℃1分, 72℃2分, 94℃1分の反応条件で30サイクルの増幅を行った. PCR産物の分析は1.5%アガロースゲル電気泳動後, エチジウムブロマイド染色を行い想定される2回目PCR産物183塩基のバンドの有無で判定した. 尚, 予備実験として行ったATL細胞株HUT102の検討では5pgの細胞DNA中に存在するプロウイルスまで検出可能であり, また抗HTLV-I抗体陽性血を用いた検討では, 20検体をまとめたサンプル中に抗HTLV-I抗体陽性血が1検体あれば検出可能であった. 実際の検討は400ml採取血を分離する際のバフィーコートを10人分まとめたストックから高分子DNAを抽出して検討した. 結果:検討した1,101検体においてHTLV-Iプロウイルスは1例も検出されなかった. 考案:抗HTLV-I抗体陽性率の高い宮崎県においても献血者において抗HTLV-I抗体陰性キャリアーは見い出されなかった. この結果は松本ら(東京)の行った155例の抗HTLV-I抗体陰性血のHTLV-IプロウイルスDNAの検討と一致する(Matsumoto et al, J Virol 1990, 64, 5290-4). また改良型PA法が導入後, 輸血後の抗HTLV-I抗体陽転者が712名検討した内1名もいなかったという佐藤(福岡)の報告(日本輸血学会雑誌, 第39巻第2号379頁)とも合致し, 現在の改良型PA法の有用性を支持するものと思われた. 本研究は公益信託臨床病理学研究振興基金平成5年度研究奨励金によって行われた.
ISSN:0546-1448