婦人科子宮腫瘍疾患における自己血輸血の検討

[目的]同種血輸血に伴う輸血後肝炎やHIV感染に関わる社会的関心の向上に伴って自己血輸血が注目されている. 婦人科子宮腫瘍疾患に対する手術は大部分が待機的手術であるが, 血管の豊富な骨盤腔内のため不測の大量出血をきたし, 同種血輸血をせざるを得ないことが多々ある. 今回, 我々は婦人科腫瘍疾患に対して, 同種血輸血を回避すべく, 術前自己血貯血を行いその有用性と問題点を検討した. [対象および方法]1994年3月より10月まで当科において子宮腫瘍疾患により予定手術を行った84例を対象とした(平均年齢45.2歳, 平均体重56.1kg). 疾患別では子宮筋腫または子宮腺筋症73例, 子宮頸癌9例...

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Hauptverfasser: 飯田幸雄, 杉浦立, 吉松春彦, 斉藤つとむ, 田島秀郎, 富岡康広, 佐久間洋, 畑俊夫, 佐藤千秋, 中村路代, 並木洋子, 渋谷温
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:[目的]同種血輸血に伴う輸血後肝炎やHIV感染に関わる社会的関心の向上に伴って自己血輸血が注目されている. 婦人科子宮腫瘍疾患に対する手術は大部分が待機的手術であるが, 血管の豊富な骨盤腔内のため不測の大量出血をきたし, 同種血輸血をせざるを得ないことが多々ある. 今回, 我々は婦人科腫瘍疾患に対して, 同種血輸血を回避すべく, 術前自己血貯血を行いその有用性と問題点を検討した. [対象および方法]1994年3月より10月まで当科において子宮腫瘍疾患により予定手術を行った84例を対象とした(平均年齢45.2歳, 平均体重56.1kg). 疾患別では子宮筋腫または子宮腺筋症73例, 子宮頸癌9例, 子宮体癌2例であり, 術式別では腹式単純子宮全摘術69例, 筋腫核出術4例, 準広汎子宮全摘術4例, 広汎子宮全摘術7例であった. 経口鉄剤を採血開始前から投与した. 自己血貯血は術前21日前より7日間隔で2回ないし3回行った. 一回の採血量は400mlで計800~1200mlを貯止した. 血液保存はCPD加血液バッグを用い, 採血前, 血中ヘモグロビン(Hb)値が, 体重70kg未満で149/dl以下, 体重70kg以上で13g/dl以下の場合, 一回(400ml)の採血につきr-HuEPO6000IUを週3回, 計18000IUを静注した. 術後出血量に応じて適宜, 自己血輸血を行った. [結果]平均自己血貯血量は821±105mlであった. 貯血前平均Hb量は12.8±1.2g/dlであり, 貯血後平均Hb量は12.0±1.1g/dlであった. 採血時に血圧低下を来たし, 採血を中止せざるを得なかったものは一例のみ認めたが, 他は採血時に臨床上問題となる副作用を認めなかった. また貯血後, 著明なHbの低下を認めた症例はなかった. 平均術中出血量は385±247ml, 平均自己血輸血量は518±197mlであった. 同種血輸血が更に必要であったものは広汎子宮全摘術の1例のみで, 他はすべて自己血のみにて対処可能であった. [まとめ]婦人科領域の待機的手術において自己血輸血は有用であり, 術式によっては同種血輸血はほとんど回避し得ることが判明した.
ISSN:0546-1448