自己血輸血にて手術を行った抗JMH抗体陽性の1症例
高頻度抗原に対する抗体陽性患者への適合血の選択は困難を伴うが, 今回我々は自己血のみで手術を実施し得た抗JMH抗体陽性例を経験したので報告する. 症例:患者は76歳男性, 1988年に他院にて仙骨部脊索腫の手術時に輸血歴があるが, その時には不規則抗体は検出されていない. その後1990年に当院紹介となり2回にわたり同手術を行っているが, いずれも不規則抗体は陰性であった. 1993年4月腰臀部痛の増強により脊索腫の緊急手術の予定で入院となった. 血液型はB型, CCDee, Ms, Le(a-b+), P_1 ,Jk(a+b+), Fy(a+b-), Di(a-)直接抗グロブリン試験弱陽性で...
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Zusammenfassung: | 高頻度抗原に対する抗体陽性患者への適合血の選択は困難を伴うが, 今回我々は自己血のみで手術を実施し得た抗JMH抗体陽性例を経験したので報告する. 症例:患者は76歳男性, 1988年に他院にて仙骨部脊索腫の手術時に輸血歴があるが, その時には不規則抗体は検出されていない. その後1990年に当院紹介となり2回にわたり同手術を行っているが, いずれも不規則抗体は陰性であった. 1993年4月腰臀部痛の増強により脊索腫の緊急手術の予定で入院となった. 血液型はB型, CCDee, Ms, Le(a-b+), P_1 ,Jk(a+b+), Fy(a+b-), Di(a-)直接抗グロブリン試験弱陽性であったが, 抗体解離試験で抗体は検出されなかった. 不規則抗体スクリーニングは間接抗グロブリン試験にてすべてのパネルセルに凝集を呈し, 高頻度抗原に対する抗体が疑われたため, 日赤血液センターに精査を依頼した. 血清中の抗体はJMH(-)血6例と陰性, 患者血球は抗JMH抗体4例と陰性, 抗JMH-like2例と陽性であり抗JMH抗体と同定された. 5名の家族からの適合血の検索を試みたが, すべてJMH(+)であった. このため, 手術を延期し自己血を貯血することとなり, 鉄剤静注(フェジン80mg/日)のもと8日間で400ml採血を4回, 計1,600ml貯血し腫瘍切除術を実施した. 術中出血量は1,144ml, 術後出血もほとんどなく自己血輸血のみで対応することができた. 術前・術後のHb値は各14.7g/dlと13.4g/dlであった. その後ビリルビン値の上昇もなく, 抗JMH抗体価にも変化はなかった. まとめ:抗JMH抗体陽性症例で比較的短期間に1,600mlの自己血貯血を行い, 日赤の解凍赤血球を使うことなく手術に対応することができた症例を経験した. 早期の不規則抗体スクリーニング実施により, 稀な血液型や高頻度抗原に対する抗体陽性患者では自己血の貯血量をさらに増量することができ, より安全な手術が可能になると思われた. |
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ISSN: | 0546-1448 |