HLA型のhomozygousな変化と著明な脾萎縮を認めた輸血後GVHD

1955年当科の霜田1)が術後紅皮症をまとめ報告した. 当時, 術後紅皮症を“赤鬼”と呼び, “赤鬼になると死ぬ”といわれていた. 近年, 井野2), Sakakibara, Juji3)により, この病態が, 輸血されたTリンパ球が患者内に生着し, 患者の組織を非自己と認識し, 攻撃するというもので, 致死率の高いものであることが示された. 開心術4)や食道癌手術5)では, 全血輸血や凍結血漿の投与により, 術中術後の合併症が減少してきた. しかしこの輸血後GVHDの出現により, 外科医の輸血に対する考え方が問われている. 今回我々は, 食道癌術後症例で, HLA型のhomozygousな変...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 1990, Vol.36 (1), p.168-171
Hauptverfasser: 添田耕司, 小野田昌一, 神津照雄, 奥山和明, 磯野可一, 田辺恵美子, 浅井隆善, 伊藤道博, 近藤福生
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:1955年当科の霜田1)が術後紅皮症をまとめ報告した. 当時, 術後紅皮症を“赤鬼”と呼び, “赤鬼になると死ぬ”といわれていた. 近年, 井野2), Sakakibara, Juji3)により, この病態が, 輸血されたTリンパ球が患者内に生着し, 患者の組織を非自己と認識し, 攻撃するというもので, 致死率の高いものであることが示された. 開心術4)や食道癌手術5)では, 全血輸血や凍結血漿の投与により, 術中術後の合併症が減少してきた. しかしこの輸血後GVHDの出現により, 外科医の輸血に対する考え方が問われている. 今回我々は, 食道癌術後症例で, HLA型のhomozygousな変化と著明な脾萎縮を認めた輸血後GVHDの1例を経験したので, 剖検所見を中心に報告する. 症例 症例は, 72歳の男性で日本人である. 主訴は, 嚥下困難で既往歴は持たない. 1988年9月主訴出現して近医受診し食道癌と診断され, 10月24日当科紹介され手術のため入院した. 入院時検査では, 食道癌は, 上部消化管造影でEiImにらせん型7.5cmの腫瘤を認め, 内視鏡検査では, 口唇より30cmで全周狭窄を認めた. 末梢白血球数は, 5,500/立方ミリメートル, 赤血球数350×10^4 /立方ミリメートル, 血小板29.2×10^4 /立方ミリメートルであり, 血清総蛋白6.9g/dl, GOT 9U/l, BUN6mg/dlと他に異常は認められなかった. 術前経過は, 30Gyの放射線治療と, CDDP50mg, Vindecin 2mgを2回の化学療法を施行し, 一過性の白血球減少症を認めた. 手術術式は, 右開胸開腹, 胸腹部食道全摘, 胸壁前食道胃吻合術兼頚部リンパ節郭清術であり, 手術時間は9時間, 出血量は717gであった. 輸血は, CPD加新鮮血800mlを投与した.
ISSN:0546-1448