抗A, 抗Bモノクローナル抗体の臍帯血液血液型判定への評価

【目的】ABO式血液型判定には, 人及び動物由来の抗血清が用いられてきた. 今回, ABO式血液型判定用試薬としての抗A, 抗Bモノクローナル抗体(Ortho社)を試用することができたので, ウラ試験が成立せず, 抗原活性も低いとされている臍帯血液を用いて, 日常検査への有用性を検討したので報告する. 【対策及び方法】当院産婦人科で出産した新生児の臍帯血液及び母親血液を用いた. 特異性, 凝集価及び凝集開始時間について人由来抗血清を対照に実施すると共に, 母児間での比較も実施した. 臍帯血液は, Whaton膠質が混入していると偽凝集をおこすので, 3回洗浄した後, 検査に用いた. 【結果】特異性試験:A, B, AB, O各5例を用いた抗Aモノクローナル抗体はA型及びAB型血球を強く凝集し, B型及びO型血球とは反応を示さなかった. 抗Bモノクローナル抗体にも同様に特異性を認めた. 凝集価 試験:抗Aモノクローナル抗体はA型及びAB型血球に対して128～1,024倍の凝集価を示し, 人由来抗血清に比べ1～3管高い傾向であった. 抗Bモノクローナル抗体はB型及びAB型血球に対して64～1,024倍の凝集価を示し, 人由来抗血清に比べ0～2管高い傾向であった. 凝集開始時間:抗Aモノクローナル抗体はA型及びAB型86例で平均7.6秒で, 人由来抗血清では7.0秒であった. 抗Bモノクローナル抗体ではB型及びAB型83例で平均11.5秒, 他方8.5秒といずれもモノクローナル抗体が遅い傾向であった. 暖帯血球と母親血球の凝集価では, モノクローナル抗体, 人由来抗血清共に0～3管臍帯血球が低値を示した. 以上の結果より, 凝集開始時間の遅いことに注意すれば, 当モノクローナル抗体は臍帯血液のABO式血液型判定に十分有用であると考える. 母児間での検討は更に症例を増して, 多方面からの解析を報告する予定である.