抗IgA抗体によると考えられる稀な輸血副作用について
I 目的 IgA欠損者の中には, 抗IgA抗体を持っている人が少なくなく, これらの人が輸血を受けた場合, 時によっては, 致命的なアナフィラキシー反応を起こすことはよく知られている. 今回我々は, 抗IgA抗体が輸血副作用を惹き起こしたと思われる, 稀な症例を経験したので報告する. II 症例 患者は, 70才の女性で, 胃癌手術のため赤血球濃厚液を輸血した. 輸血直後より, 不快感, 悪寒, 発熱などの副作用を訴えた. 現在までに, 妊娠歴は1回あるものの, 輸血歴及びγ―グロブリン投与歴はなかった. III 成績 抗赤血球抗体・抗白血球抗体・抗血小板抗体については, 輸血前及び輸血後の患...
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Veröffentlicht in: | 日本輸血学会雑誌 1988, Vol.34 (2), p.189-189 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | I 目的 IgA欠損者の中には, 抗IgA抗体を持っている人が少なくなく, これらの人が輸血を受けた場合, 時によっては, 致命的なアナフィラキシー反応を起こすことはよく知られている. 今回我々は, 抗IgA抗体が輸血副作用を惹き起こしたと思われる, 稀な症例を経験したので報告する. II 症例 患者は, 70才の女性で, 胃癌手術のため赤血球濃厚液を輸血した. 輸血直後より, 不快感, 悪寒, 発熱などの副作用を訴えた. 現在までに, 妊娠歴は1回あるものの, 輸血歴及びγ―グロブリン投与歴はなかった. III 成績 抗赤血球抗体・抗白血球抗体・抗血小板抗体については, 輸血前及び輸血後の患者血液中に検出されなかった. しかし, IgAについては, 輸血前の患者血清中に検出されなかった. そこで, 抗IgA抗体について検査したところ, 凝集試験で力価が64~128倍の抗IgA抗体が検出された. しかし, 輸血後には, この抗IgA抗体は検出されなくなったが,IgAについては, 輪血液に由来すると思われるIgA(凝集抑制試験:16~24倍)が検出された. そして, 更に輸血後22日目の患者血清中に再び抗IgA抗(凝集試験256~512倍)が検出され, IgAは検出されなかった. この抗体価は, 輸血前に比較して4倍の力価の上昇をみた. また, 患者の唾液中についてもIgAは検出されず, IgHが検出された. 抗IgA抗体の保有が確認以後は解凍赤血球の輸血を行ったが, 特に副作用は見られなかった. IV 結論 今回我々は, 極めて普通に見られる悪寒・発熱という輸血副作用の中から, 抗IgA抗体が原因と思われる輸血副作用を見い出した. IgA欠損者が輸血を受ける体制は, 必ずしも十分とは言えない. そのため当センターでは, 今後IgA欠損者のスクリーニング及びその献血者の登録を行い, IgA欠損者野に対する輸血体制を再度整えていく予定である. |
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ISSN: | 0546-1448 |