血液型変異によってA3Bの所見を示したA2Bの一例

ABO式血液型検査でオモテとウラ試験不一致の場合, 亜型, 血液型キメラ, 血液型変異などの可能性を考えて分析するのが例であるが, 今回われわれは一見A_3 B型の所見を呈した症例の家族調査を含む検索の結果Aの亜形(A_2 )と血液型変異とが合併していることを明らかにした. [症例]62才男性, 1987年1月脳腫瘍の手術ののため当院に入院. ABO式血液型検査においてオモテ, ウラ不一致なので精査を依頼された. [検査成績]オモテ検査では抗Aに対し部分凝集を示し, 非凝集細胞は80. 4%であった. 抗Bには強く凝集するが, ウラ検査ではA, B, Oいずれの血球をも凝集させなかった. ドリ...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 1988, Vol.34 (2), p.177-177
Hauptverfasser: 伊東登志子, 鈴田達男
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:ABO式血液型検査でオモテとウラ試験不一致の場合, 亜型, 血液型キメラ, 血液型変異などの可能性を考えて分析するのが例であるが, 今回われわれは一見A_3 B型の所見を呈した症例の家族調査を含む検索の結果Aの亜形(A_2 )と血液型変異とが合併していることを明らかにした. [症例]62才男性, 1987年1月脳腫瘍の手術ののため当院に入院. ABO式血液型検査においてオモテ, ウラ不一致なので精査を依頼された. [検査成績]オモテ検査では抗Aに対し部分凝集を示し, 非凝集細胞は80. 4%であった. 抗Bには強く凝集するが, ウラ検査ではA, B, Oいずれの血球をも凝集させなかった. ドリコスとは全く反応せず, ウーレックスには対照AB血球と同様の成績を示した. 唾液の吸収試験では非分泌型で誘出試験では患者血球誘出液は正常A血球を凝集させ, 血清中の糖転換酵素はBに対するもののみ認められAに対する酵素は証明されなかった. 家系調査においては, 発端者の同胞(兄)長女, 次女ではオモテ, ウラとも部分凝集はなく, A型であるがドリコスとは反応せず, A_2 の因子をもつことがわかった. 「考察」抗Aに対し部分凝集を示す場合, 1)Aの亜形, 2)血液型変異, 3)血液型キメラ, 4)異型血液の混入などの可能性を考えるが, 本例は双生児でなく, 輸血も最近受けたことがなく, 家系調査の成績から発端者の本来の型は当初予想されたA_3 Bではなく, A_2 Bであることが分かった. 部分凝集を呈したのは腫瘍による血液型変異のためと考えられる.
ISSN:0546-1448