開心術後重篤な遷延性溶血をみた不規則抗体保有例

【目的】当施設では現在まで, 開心術後重篤な遷延性溶血を併発した3症例を経験した. 開心術例における不規則抗体の重要性を検討した. 【方法・結果】症例1は心房中隔欠損症の40歳女性. 根治手術時2000ml輸血し, 15日目に急激な溶血反応を示し, 抗E+C抗体が検出された. 輸血をせず保存治療で全身状態は改善, 2ヶ月後貧血も消失し退院した. 症例2は25年前に僧帽弁交連切開術を施行した61歳女性. 術前抗cE抗体が検出され, 今回の弁置換術中cE因子陰性の適合血3400ml使用した. 術後血行動態は安定していたが, ドレーン出血が続き, 再開胸を繰り返すも止血困難であった. 術後10日目に...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 1987, Vol.33 (2), p.135-135
Hauptverfasser: 平松健司, 秋山一也, 橋本明政, 小柳仁, 林久恵, 藤原ムチ, 清水勝
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【目的】当施設では現在まで, 開心術後重篤な遷延性溶血を併発した3症例を経験した. 開心術例における不規則抗体の重要性を検討した. 【方法・結果】症例1は心房中隔欠損症の40歳女性. 根治手術時2000ml輸血し, 15日目に急激な溶血反応を示し, 抗E+C抗体が検出された. 輸血をせず保存治療で全身状態は改善, 2ヶ月後貧血も消失し退院した. 症例2は25年前に僧帽弁交連切開術を施行した61歳女性. 術前抗cE抗体が検出され, 今回の弁置換術中cE因子陰性の適合血3400ml使用した. 術後血行動態は安定していたが, ドレーン出血が続き, 再開胸を繰り返すも止血困難であった. 術後10日目に抗S抗体が初めて検出され, その時点までS因子未確認血を更に6000ml使用していた. 術後13日目より腎不全に陥り, DICとなり大量の消化管出血を併発, 23日目に死亡した. 症例3も再手術例で, 今回三弁置換術を施行した45歳男性. 術前ワーファリンを服用術中8650ml出血した. 術後10日目より溶血反応顕著となり, 直接クームス陽性で抗cE抗体が検出された. この時点までcE因子不適合血3800mlを使用していた. その後腎不全・出血傾向・多臓器不全が進行し, 31日目に死亡した. 各症例とも妊娠や過去の輸血を契機に不規則抗体が産生され, 一時はスクリーニングで検出できない程弱まっていたが, 大量輸血により二次的免疫応答をおこし抗体が大量に再生産され, 重篤な遷延性溶血反応をみたと思われた. 【結論】大量輸血を必須とする開心術では不規則抗体が問題となる場合がある. 再手術例の増加しつつある現在初回手術では可能な限り無輸血手術を心がけるべきである. 再手術時にはスクリーニングでは陰性の場合も常にこの種の抗体の存在を念頭におき術後管理を行うべきである.
ISSN:0546-1448