腎移植後同種免疫の原則に反する不規則性抗体の産生とそれによる溶血性貧血を認めた1例
宿主が持たない抗原を持つ臓器または細胞をその宿主に輸血または移植した場合同種免疫が成立するが, 逆の場合には起こらないはずである. 我々はこの原則に反してO型の母親から腎移植を受けたB型の宿主にIgG型の抗Bによる溶血性貧血を発現した1例を経験した. 症例:34歳の男性, 慢性糸球体腎炎のため5年前から血液透析を受けていたが, 昨年4月に腎の移植手術を本学八王子医療センターで受けた. 術前の検査では患者はB, 母はO型で何れも表, 裏とも不一致はなく, 患者の直接および間接抗グロブリン試験(AGT)は陰性であった. 手術中および前後を通じて輸血は全く施行せず, 術後良好な経過を辿ったが, 第1...
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Veröffentlicht in: | 日本輸血学会雑誌 1986, Vol.32 (2), p.297-297 |
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Hauptverfasser: | , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 宿主が持たない抗原を持つ臓器または細胞をその宿主に輸血または移植した場合同種免疫が成立するが, 逆の場合には起こらないはずである. 我々はこの原則に反してO型の母親から腎移植を受けたB型の宿主にIgG型の抗Bによる溶血性貧血を発現した1例を経験した. 症例:34歳の男性, 慢性糸球体腎炎のため5年前から血液透析を受けていたが, 昨年4月に腎の移植手術を本学八王子医療センターで受けた. 術前の検査では患者はB, 母はO型で何れも表, 裏とも不一致はなく, 患者の直接および間接抗グロブリン試験(AGT)は陰性であった. 手術中および前後を通じて輸血は全く施行せず, 術後良好な経過を辿ったが, 第10病日頃から貧血が次第に著明となる. 術後14日目には黄疸, ヘモグロビン尿, 末梢血に網状赤血球(15%), 赤芽球の出現を認めた. 輸血のため数lotのB型血液と交差試験を行ったところ, すべて主試験が凝集し, 不適合抗体の精査を依頼された. 検査成績:患者血球は表検査で抗Bのみに凝集し, 裏検査ではA, B血球をともに凝集したが, 後者の凝集は弱く凝集価は前者の1:512に対し後者は1:2に過ぎなかった. 自己凝集は認めなかったが, 直接およびB血球に対する間接AGTは何れも陽性で, 患者血球の誘出試験により抗B抗体を検出した. その他の血液型はMNss, CDe(E, cは判定不能, Le(a+b-), Fy(a+b-), Lu(a-b+), k, Kp^b +, Js^b +, I, P_1 +)で, 特に異常はなかった. 患者血清の抗B価は2ME処理で影響を受けなかった. その後の経過:患者は免疫抑制剤の投与を受けていたが貧血の出現後中止し, O型洗浄血球の輸血を受けた. 溶血性貧血は次第に改善したが, 第19日にrejectionが発現し, 第28日に移植腎を摘出し, 抗B不規則抗体は第49病日には消失した. この原因について考えられる幾つかの可能性を検討しているので併せて報告する予定である. |
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ISSN: | 0546-1448 |