DDAVP投与によるvon Willebrand病Type Iの左大腿慢性嚢腫様血腫摘出術
〔緒言〕von Willebrand病患者(以下vWD)の止血管理には, 従来よりCryoprecipitate剤が用いられていたが, 肝炎の発生や頻回投与時の高Fibrinogen血症等の副作用があった. 1975年Mannucciらは尿崩症の治療薬である1-deamino-8-D-arginine-vasopressin(以下DDAVP)が第VIII因子を上昇させる作用のあることを報告して以来, 血友病AやvWDの止血管理の報告がなされる様になった. しかし, vWDの抜歯以外の手術例は少い. 今回我々は本剤を用い, vWDType Iの大腿部慢性嚢腫様血腫摘出術を行ったので報告する. 〔...
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Veröffentlicht in: | 日本輸血学会雑誌 1984, Vol.29 (6), p.641-642 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 〔緒言〕von Willebrand病患者(以下vWD)の止血管理には, 従来よりCryoprecipitate剤が用いられていたが, 肝炎の発生や頻回投与時の高Fibrinogen血症等の副作用があった. 1975年Mannucciらは尿崩症の治療薬である1-deamino-8-D-arginine-vasopressin(以下DDAVP)が第VIII因子を上昇させる作用のあることを報告して以来, 血友病AやvWDの止血管理の報告がなされる様になった. しかし, vWDの抜歯以外の手術例は少い. 今回我々は本剤を用い, vWDType Iの大腿部慢性嚢腫様血腫摘出術を行ったので報告する. 〔症例〕17歳女性. 主訴・左大腿部腫瘤. 家族歴・血族結婚認めず. 母親はvWD. Type I既往歴・満期安産. 生後1歳頃より鼻出血や皮下出血をくり返していた. 又, 乳児期の発熱時に近医にて頻回に抗生剤の両大腿部筋肉内注射を受けていた. 4歳時に心雑音を指摘され, 某病院で特発性肺動脈拡張症及び卵円孔開存症と診断されていた. 現病歴・15歳時, 左大腿部腫瘤に気付き, 某大学病院を受診しvWDと診断された. その後, 腫瘤は縮小傾向なく, 昭和57年11月1日, 腫瘤摘除の目的で奈良医大整形外科に入院し, 小児科で止血検査を行った. 入院時現症・顔貌正常, 体重48kg, 聴心にて収縮期性雑音Levine III/VIを認めるもチアノーゼなし. 左大腿外側に有痛性腫瘤(3×8cm)と右大腿外側に無痛性瘡痕(1×1.5cm)を触知した. 入院時検査所見・末梢血, 肝機能検査及び尿検査に異常なし. 出血時間3分30秒, 全血凝固時間9分と正常なるも, K-PTT61.0秒とやや延長し, VIII:C34%, VIII:CAG30%, VIIIR:AG25%, VIIIR:RC16%と低下し, RIPAも欠如していた. 又, 二次元交叉免疫電気泳動像では正常arc.を示すvWD Type Iであった. 術前のCT検査では左大腿四頭筋上にカプセル様になった血腫が認められた. 経過・術前に静注用DDAVP20μg/(約0.4μg/kg)を5%ブドウ糖20mlに稀釈した後, ゆっくり静脈内注入した. 1時間後, 出血時間2分, VIII:C78%, VIIIR:RC48%に上昇したのを確認し, 全麻下にて腫瘤摘出を行った. 腫瘤は大きさ, 2×2.5×6cmの嚢腫様血腫であり, 術中出血量は27mlと微量であった. 術後DDAVP20μgを12時間毎に2日間, そして24時間毎に3日間注入し, 出血時間4分以内, VIII:C30~80%, VIIIR:RC16~60%に維持した. 第7日目, 切開創上部に血腫(0.5×0.8cm)出現し, 再手術をさけるため第VIII因子剤を1回注入した. 第9日目, 再びDDAVP20μgを注入し, VIII:C100%, VIIIR:RC96%に上昇させ, 抜糸を行い, 11月30日, 退院した. 本剤は, 初回注入時のみ一過性に顔面紅潮あったが, 以後頻回注入にも, 血圧の変化や頭痛, 吐気, 尿量減少, 低Na血症等の水中毒を思わせる症状はなかった. 又, DDAVPはプラスミノゲン・アクチベータを上昇させることが知られているが, 経過中t-AMCHA 750mgを経口にて連日投与することで線溶能亢進もなかった. |
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ISSN: | 0546-1448 |