無血体外循環法の経験
開心術の施行に伴なう人心工肺の使用は, 回路充填液としての血液の使用・術中出血および術後出血のため大量の血液を必要としてきた. しかしながら, 輸血の副作用としての輸血後肝炎の発生・血液確保に対する社会的問題より, 近年, 無血充填による体外循環法, 更には術中・術後を通して血液成分を用いない無輸血開心術の可能性が追求されてきている. 今回, 当教室にて1980年10月以降施行した無血体外循環例および一歩進んだ無輸血開心術例51例の術中・術後経過を検討し報告する. 対象としては体重30kg以上・術前Ht35%以上・人工心肺時間120分以下の症例を選んだ. 人工心肺充填液としてはヘスパンダー50...
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Format: | Tagungsbericht |
Sprache: | jpn |
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Zusammenfassung: | 開心術の施行に伴なう人心工肺の使用は, 回路充填液としての血液の使用・術中出血および術後出血のため大量の血液を必要としてきた. しかしながら, 輸血の副作用としての輸血後肝炎の発生・血液確保に対する社会的問題より, 近年, 無血充填による体外循環法, 更には術中・術後を通して血液成分を用いない無輸血開心術の可能性が追求されてきている. 今回, 当教室にて1980年10月以降施行した無血体外循環例および一歩進んだ無輸血開心術例51例の術中・術後経過を検討し報告する. 対象としては体重30kg以上・術前Ht35%以上・人工心肺時間120分以下の症例を選んだ. 人工心肺充填液としてはヘスパンダー500mlとメイロン2~3ml/kg, マニトール5ml/kgを用い, 他に5%ブドウ糖液・電解質液を加えた. 心肺終了後の還血法には希釈血を濃厚赤血球成分と血漿成分に分離し, 赤血球成分の早期還血による酸素運搬能の改善の得られるセルセーバー法を用いた. 血漿成分も全て輸液した. 51例の内訳はASDのみ33例, ASD+PS 3例, ASD+MR 1例, PS 1例, TOF 1例, A-C Bypass 9例, MVR 2例, RA myxoma 1例であった. 死亡例はなく, 1例を除いて無輸血開心術を行ないえた. 人工心肺回転中の最低Ht値を酸素運搬能の面から15%とすると, 検討した42例中10例がHt15%以下であり回路量の減少が必要と考えられた. 術後経過中の血液成分の推移を無血充填群と有血充填群で比較した結果, ヘマトクリット値に有意差を認めた. Ht値の低下に対し血清鉄を示標に鉄剤投与を行なったが, 3週間後平均32.3±6.0%を示した. 総蛋白量については心肺回転中は低下するが, 術後利尿と共に上昇し, 術後1週間にて術前値に復帰した. 無血充填群と有血充填群に有意差を認めなかった. 血清酵素の変化については特にLDHに大きな差を認め, 有血充填群では術後3週間後も無血充填群に比し高値を示し有意差を認めた. 更に術後肝炎の発生を1980年・1981年の2年間に施行したASD例112例(無血充填群37例・有血充填群75例)につき検討した. 特に術後経過中GPT値が150KU以上上昇した例をpick upした. 1980年では有血充填群成人例36例中9例に肝炎発生を認め, この解決を目的に無血充填法が導入されたが, 以後無血充填法で無輸血開心術を行ない得た36例には術後肝炎の発生を認めていない. 1981年の有血充填群中成人例8例中1例に肝炎発生を認めた. 一方15歳以下の小児例31例は有血充填群であるが術後肝炎の発生を認めていないのが特徴であった. 以上, 51例の無血体外循環法の術中・術後経過を検討し, 本法の安全性と有効性を確認した. 今後, 低体重児例・長時間回転例への適応拡大のためには, 人工心肺充填液量の減少を目的とした回路および装置の改良が必要であると考えている. |
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ISSN: | 0546-1448 |