供血源よりみた保存血液製造量の推移

現在, わが国においては, 年間約60万リットルの保存血液が必要とされている. 保存血液の製造のための供給源は, 献血・予血・売血の3種であるが, 従来わが国の血液事業は売血制度を基磐として成り立っているといわれてきたように, 少なくとも39年前半までは, 殆んどが売血によるものであった. 昭和26年, わが国で始めて血液銀行が設置されて以来, 医学の急速な進歩とともに保存血液の需要のいちじるしい増大に伴ない, 売血制度の果した役割は大きく, これによって幾多の尊い人命が救われてきたことは事実である. しかし, 一方売血制度に起因する多くの弊害-供血者の固定化, 供血者貧血等-が, この10数...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 1965, Vol.11 (3/5), p.154-155
Hauptverfasser: 山形操六, 本田正
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:現在, わが国においては, 年間約60万リットルの保存血液が必要とされている. 保存血液の製造のための供給源は, 献血・予血・売血の3種であるが, 従来わが国の血液事業は売血制度を基磐として成り立っているといわれてきたように, 少なくとも39年前半までは, 殆んどが売血によるものであった. 昭和26年, わが国で始めて血液銀行が設置されて以来, 医学の急速な進歩とともに保存血液の需要のいちじるしい増大に伴ない, 売血制度の果した役割は大きく, これによって幾多の尊い人命が救われてきたことは事実である. しかし, 一方売血制度に起因する多くの弊害-供血者の固定化, 供血者貧血等-が, この10数年くすぶり続けていたことも事実である. 39年4月, 輸血学会において, 血清肝炎の発生状況とくに売血血を輸血したとき発生する血清肝炎の割合は, 献血・預血のそれと比べ異常に高率であることが発表された. また, ライシャワー大使が血清肝炎にかかったという報道が行なわれた. さらに, 売血血を輸血した患者が死亡するという事件が, 4月と6月に2件発生した. これらの事実が直接の動機となって, 39年5月下旬, 売血制度の弊害が新聞紙上に取り上げられ, 引きつづいてジャーナリズムは一せいに売血制度の実態, 血清肝炎その他血液問題についての報道を行ない, いわゆく「黄色い血」の問題として, かつて厚生省所管の業務上例を見ない長期間にわたる論争が続けられた.
ISSN:0546-1448