A9 皮脂腺に発現するTIMP-2は脂腺細胞の増殖因子として機能する

【目的】皮脂腺は外郭の基底細胞層と皮脂を蓄積した脂腺細胞から成る脂腺小葉から構成され, 細胞質内に蓄積された皮脂は毛包内および皮表へ分泌される. これまでの皮脂腺に関する研究では主に皮脂の産生調節に注目が置かれており, 皮脂腺の形成や脂腺細胞の増殖制御については十分に理解されていないのが現状である. 一方, TIMPsはMMPによる細胞外マトリックスの分解調節に寄与するのみならず, 種々の細胞に対し増殖因子として機能する. 今回, ハムスター皮脂腺およびその培養脂腺細胞におけるTIMPs発現と脂湶細胞の増殖に対するTIMPsの作用を検討した. 【方法】雄性ゴールデンハムスター(5週齢)の耳介部より分離した皮脂腺より脂腺細胞を樹立した. 皮脂腺組織および脂腺細胞において皮脂産生はoil red 0染色法, TIMPs産生は免疫組織化学染色およびウエスタンブロット法, 細胞増殖はAlamer blue法, 皮脂腺のゼラチナーゼ, 活性はin situ zymography法によりそれぞれ解析した. 【結果】脂腺細胞はTIMP-1およびTIMP-2を産生するものの, 皮脂腺組織においてTIMP-1は検出されず, TIMP-2の特異的染色のみが観察された. また, TIMP-2は基底細胞層に発現することが判明した. さらに, 培養脂腺細胞にTIMP-1およびTIMP-2を添加したところ, TIMP-2のみが細胞増殖を促進した. 一方, 脂腺細胞の分化誘導因子であるinsulinはTIMP-2産生を抑制すること, またinsulin処理により分化した脂腺細胞においてTIMP-2 mRNA発現が減少した. さらに, 脂腺小葉において顕著なゼラチナーゼ活性が検出された. 【結論】皮脂腺の基底細胞層に発現するTIMP-2は脂腺細胞の増殖に寄与し, またその発現減少がゼラチナーゼ活性発現を伴う脂腺細胞の分化に関与することが示唆された.