S18 角膜上皮細胞と実質細胞の相互作用について

角膜は眼球の前面に存在する透明無血管の組織で, 上皮層, 実質層, 内皮層の3層で構成され, 眼球壁の前面を構成するとともに, 眼球全体の3分の2の屈折力を有する光学系としての機能を担っている. 角膜の再生は損傷の程度によりこれらの3層に様々な現象が引き起こされる. 角膜上皮のみの傷害では, まず上皮欠損部周囲の上皮細胞が一層になって移動して欠損部を被覆し, 創傷治癒が開始される. 我々のグループは角膜上皮細胞の移動の足場としてフィブロネクチンが重要な役割を果たしていることを見いだし, 臨床の場における有用性を示してきた. また, 近年の細胞生物学や組織工学の発展により上皮幹細胞が障害された難...

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Veröffentlicht in:CONNECTIVE TISSUE 2004, Vol.36 (2), p.82-82
Hauptverfasser: 柳井亮二, 山田直之, 劉洋, 川本晃司, 乾誠, 西田輝夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:角膜は眼球の前面に存在する透明無血管の組織で, 上皮層, 実質層, 内皮層の3層で構成され, 眼球壁の前面を構成するとともに, 眼球全体の3分の2の屈折力を有する光学系としての機能を担っている. 角膜の再生は損傷の程度によりこれらの3層に様々な現象が引き起こされる. 角膜上皮のみの傷害では, まず上皮欠損部周囲の上皮細胞が一層になって移動して欠損部を被覆し, 創傷治癒が開始される. 我々のグループは角膜上皮細胞の移動の足場としてフィブロネクチンが重要な役割を果たしていることを見いだし, 臨床の場における有用性を示してきた. また, 近年の細胞生物学や組織工学の発展により上皮幹細胞が障害された難治性の角膜上皮障害に対し, in vitroで培養した上皮細胞シートをin vivoへ移植する治療法が開発され, 臨床応用が試みられている. 一方, 角膜の厚みの90%を占める実質層はコラーゲン, プロテオグリカン, 糖タンパク質などの細胞外マトリックスと角膜実質固有の線維芽細胞により構成されており, 均一な直径のコラーゲン線維が規則正しく配列した構造が角膜の透明性に大きく貢献している. 角膜実質の再生は, コラーゲン線維が規則正しく再構築されることが重要であるが, 上皮欠損を伴った角膜実質におよぶ傷害では涙液を介してマクロファージや炎症性細胞が角膜実質へと侵入し, 大量のサイトカインが放出されるため, 角膜線維芽細胞の増殖が促進されるとともにコラーゲン線維の産生亢進や収縮が起こり, コラーゲン線維の配列が不規則となり, 角膜実質の透明性が損なわれる. このため, 角膜実質の透明性を維持した再生には, 細胞増殖や細胞外マトリックスを制御する因子について解明することが必要で, その際に生じる角膜上皮-実質の相互作用による影響についても明らかにする必要がある. 本講演では, 角膜の再生における制御因子および角膜上皮-実質相互作用について概説する.
ISSN:0916-572X