S2 マウス初期発生におけるラミニンα1鎖の機能と重要性

【目的】基底膜蛋白質ラミニンはα, β, γ鎖からなるヘテロ三量体構造をとるが, α鎖により発現や機能が制御される. α1鎖は最初に報告されたα鎖であるが, 最近胎生期や神経初期発生に限局した発現を示すことが解ってきた. ラミニンα1鎖(Lama1)の発生や疾患における働きを解明するためLama1欠損マウスを作成した. 【方法】Lama1ヘテロ欠損マウスの交配により得たホモ欠損胚を免疫組織, 免疫電顕など形態的に解析した. 【結果】新生仔の中にホモ欠損マウスは認められず, 胎生致死が考えられた. ホモ欠損胚は正常な胚盤胞を形成し胚盤胞培養では野生型同様に栄養膜細胞(trophoblast)と壁...

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Veröffentlicht in:CONNECTIVE TISSUE 2004, Vol.36 (2), p.66-66
Hauptverfasser: 平澤恵理, 小川順子, 山田吉彦
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【目的】基底膜蛋白質ラミニンはα, β, γ鎖からなるヘテロ三量体構造をとるが, α鎖により発現や機能が制御される. α1鎖は最初に報告されたα鎖であるが, 最近胎生期や神経初期発生に限局した発現を示すことが解ってきた. ラミニンα1鎖(Lama1)の発生や疾患における働きを解明するためLama1欠損マウスを作成した. 【方法】Lama1ヘテロ欠損マウスの交配により得たホモ欠損胚を免疫組織, 免疫電顕など形態的に解析した. 【結果】新生仔の中にホモ欠損マウスは認められず, 胎生致死が考えられた. ホモ欠損胚は正常な胚盤胞を形成し胚盤胞培養では野生型同様に栄養膜細胞(trophoblast)と壁側内胚葉(PE)の分化, 遊走が確認された. ホモ欠損胚は正常に着床したが, ライヘルト膜の形成がなくE6.5以後野生型に比較し胚の大きさが小さくなることがわかった. しかし胚盤葉上層(epiblast)と腹側内胚葉(VE)の境界にある基底膜は形成されており, 胚盤葉上層の空洞化も観察されラミニンγ1鎖欠損マウスとの差異が認められた. この基底膜には免疫組織学的にラミニンα5鎖が発現しておりα1鎖との相補的働きが示唆された. 発生に伴い野生胚では体腔が形成され胚盤葉上層は極性を持つが, ホモ欠損胚では胚盤葉上層は円筒状から変化せず, VEも極性が成熟せず, 多層性に増殖する. また, 胚体外組織の分化, 増殖も観察されず, ホモ欠損胚は野生型に比べてはるかに小さくなっていた. PCR法による胚の遺伝子型解析の結果, ホモ欠損胚は胎生9.5日までには吸収され消滅することが示された. 【結論】マウス初期発生においてラミニンα1鎖はライヘルト膜の形成に必須の働きをもち, 胚体組織形成や胚の極性の決定に重要な働きをしていることが示唆され, 初期発生におけるラミニンα5鎖との機能の違いが明らかになった.
ISSN:0916-572X