歯の細胞外マトリックスと石灰化

歯は人体で最も硬い組織として知られている. 無機質そのものであるかのような印象を持たれるかたもあるかもしれないが, 歯のマトリックスも細胞機能の場として, 生理活性を持っている. 近年の研究によって, 歯の細胞外マトリックスを構成する分子のリスト作りはほぼ完了した. 現在, これらの分子の機能が明らかにされようとしている. 歯は, 上皮と間葉の間の相互作用によって形成される複合組織である. エナメル質は, 上皮系のエナメル芽細胞によって形成される. 象牙質とセメント質は, 間葉系の象牙芽細胞とセメント芽細胞によって形成され, 骨に類似した組織である. 細胞外マトリックスに関しても, 象牙質とセ...

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Veröffentlicht in:CONNECTIVE TISSUE 2000-03, Vol.32 (1), p.77-83
Hauptverfasser: 藤沢隆一, 久保木芳徳
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:歯は人体で最も硬い組織として知られている. 無機質そのものであるかのような印象を持たれるかたもあるかもしれないが, 歯のマトリックスも細胞機能の場として, 生理活性を持っている. 近年の研究によって, 歯の細胞外マトリックスを構成する分子のリスト作りはほぼ完了した. 現在, これらの分子の機能が明らかにされようとしている. 歯は, 上皮と間葉の間の相互作用によって形成される複合組織である. エナメル質は, 上皮系のエナメル芽細胞によって形成される. 象牙質とセメント質は, 間葉系の象牙芽細胞とセメント芽細胞によって形成され, 骨に類似した組織である. 細胞外マトリックスに関しても, 象牙質とセメント質は骨や一般の結合組織に似て, コラーゲンを主体としたものである. これに対して, エナメル質の細胞外マトリックスはこれらとはまったく異なる. 歯の細胞外マトリックスの特徴はその石灰化能にあるといえよう. 歯を形成する細胞は, エナメル芽細胞の場合も象牙芽細胞の場合も, まず, タンパク質性の基質を形成する. そこにリン酸カルシウムの一種であるハイドロキシアパタイトが沈着して, 最終的には骨を上回る硬度に達する. この石灰化過程において, 結晶の核生成や結晶成長のコントロールに対して, 細胞外マトリックスが重要な役割をはたすと多くの研究者は考えている.
ISSN:0916-572X