ヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-3とマウス3T3細胞のEGFによる遊走形態

細胞の運動は癌細胞の浸潤や創傷の治癒の際に非常に重要な現象である1). 細胞が運動をするためには, 細胞が基質に接着することが必要であり, 接着後すぐに運動を始める細胞では基質に接着したシグナルは細胞内に伝わって細胞質内の運動のための装置, 配列を適正にする. このシグナルは主にインテグリンによって介在される2)が, 接着した細胞が全て運動を始めるわけではない. 多くの場合, 基質に接着した細胞にmotogenic cytokineと一括される種々の因子がそれぞれに対応する細胞のリセプターに結合し, 運動のためのシグナルを細胞内に送って運動が開始する3). 運動のためのシグナルの主たる標的はアクチン線維上にあると思われる. アクチン線維の重合, 脱重合により細胞の移動に必要な葉状仮足や微小突起が形成される4,5)