ヒト軟骨肉腫組織におけるコラーゲンの解析

〔緒言〕軟骨肉腫は軟骨様の細胞外基質を豊富に産生するが, この基質と正常軟骨基質との違いを検討するために, 今回我々は30歳女性から得た軟骨肉腫のコラーゲンを抽出し, 正常ウシ胎児関節軟骨組織と比較検討した. 〔方法〕組織をホモジナイズした後, 1M NaCl, 50mM Tris HClで可溶成分を除去後, さらに6Mグアニジンで可溶化抽出し, ペプシン消化後, 塩析により各種コラーゲンを含む画分を得た. DEAEクロマトグラフィーによりムコ多糖を除去し, SDS-PAGEを施行した. また, type X及びtype XIコラーゲンを含む画分を抗原としてモノクローナル抗体作成を試みた. 〔...

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Veröffentlicht in:CONNECTIVE TISSUE 1988, Vol.20 (3), p.168-169
Hauptverfasser: 中川弘彰, 高木克公, 北川敏夫, 北岡光彦, 小山田郁子, 宇宿源太郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:〔緒言〕軟骨肉腫は軟骨様の細胞外基質を豊富に産生するが, この基質と正常軟骨基質との違いを検討するために, 今回我々は30歳女性から得た軟骨肉腫のコラーゲンを抽出し, 正常ウシ胎児関節軟骨組織と比較検討した. 〔方法〕組織をホモジナイズした後, 1M NaCl, 50mM Tris HClで可溶成分を除去後, さらに6Mグアニジンで可溶化抽出し, ペプシン消化後, 塩析により各種コラーゲンを含む画分を得た. DEAEクロマトグラフィーによりムコ多糖を除去し, SDS-PAGEを施行した. また, type X及びtype XIコラーゲンを含む画分を抗原としてモノクローナル抗体作成を試みた. 〔結果と考察〕今回用いた軟骨肉腫は, 光顕上, 核の大小不同, 著明な核小体, 豊富なクロマチンを持つ円形ないし紡錘形細胞が腫瘍性に増生, 粘液腫様基質あるいは軟骨基質を形成し, 線維性の組織も多くみられた. かなり低分化な軟骨肉腫とおもわれる. 正常の軟骨組織に比べて湿重量に対する乾燥総重量の割合が低く, 水分に富んだ組織であることがうかがえる. 線維性の組織が多く含まれ, type Iコラーゲンを認めた. しかし, 線維性の組織が多い割にはtype IIコラーゲンは正常組織よりも高い割合を示した. 各塩濃度で析出された画分の乾燥重量を軟骨肉腫と正常組織の間で比較すると両者の間で大きな違いはなかった. しかし, 軟骨肉腫のtype X, type XIを含む画分は正常のそれぞれ2倍, 5倍の値を示していた. 電気泳動にて, type I, type II, type X, type XIコラーゲンを認めた. Type XIコラーゲンは, 正常では均一な3本のバンドとして出現するが, 本例の軟骨肉腫から抽出したtype XIコラーゲンは, いわゆる2αのバンドが, 1α, 3αに比べて極めて薄いというパターンを示した. Type Xを含む画分を抗原として作成したモノクローナル抗体を反応させ, 間接螢光抗体法で観察すると, 細胞質は染まらなかったが, 細胞外基質はよく染まっていた. なお, この抗体では他の正常軟骨組織は染まらなかった. Type XIを含む画分を抗原として作成したモノクローナル抗体による螢光抗体法では, 細胞外基質や一部の細胞が染まっていた. この抗体をwestern blotting法で上記画分に反応させると分子量3.5Kないし3.7K程の位置に1本のバンドとして反応があった. しかしtype XIコラーゲンとは反応がなかった. 今後これらの抗体のepitopeを検索し, 免疫組織化学に応用して行きたいと考える.
ISSN:0916-572X