無血清培地中で培養されたヒト線維芽細胞によるコラーゲン合成

培養細胞を用いてホルモンの作用機構を調べるのは実験系を単純化できて有用である. 通常この系では細胞増殖に必須の因子として, 血清を加えるが, 血清中にはまだ未知の因子が多数存在していること, さらに種々のホルモンをかなり多量に含んでいることが, この系での弱点となっている, ヒト線維芽細胞は無血清培養液中でも培養皿に接着し, この状態でホルモンに反応することがわかったので報告する. 細胞接着はHanks等の塩類溶液中では起こらないが, L-15, F-12, Eagleなどで起こり例えば, F-12液中では, 播いた細胞の内培養2日目で41%, 4日目で33%, 6日目で26%, 9日目で16...

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Veröffentlicht in:結合組織 1978, Vol.10 (3), p.209-209
Hauptverfasser: 吉里勝利, 黄弘毅, 塩谷信幸
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:培養細胞を用いてホルモンの作用機構を調べるのは実験系を単純化できて有用である. 通常この系では細胞増殖に必須の因子として, 血清を加えるが, 血清中にはまだ未知の因子が多数存在していること, さらに種々のホルモンをかなり多量に含んでいることが, この系での弱点となっている, ヒト線維芽細胞は無血清培養液中でも培養皿に接着し, この状態でホルモンに反応することがわかったので報告する. 細胞接着はHanks等の塩類溶液中では起こらないが, L-15, F-12, Eagleなどで起こり例えば, F-12液中では, 播いた細胞の内培養2日目で41%, 4日目で33%, 6日目で26%, 9日目で16%が接着していた. 細胞の形態を観察すると, 無血清の場合stretchingが充分でなく血清添加の場合と比べて円形に近い細胞が多く存在する. この形態は, 培養中に血清アルブミンとかfetuinなどを加えると改良がみられた. 無血清の状態で接着した細胞は生きていることは次のことで確かめた. 17日間培養を続けた後でもトリバンプルーで染色されないし, この後血清を添加すると細胞増殖が開始された. 無血清培地で培養された細胞はホルモンに反応性を示すことを, 甲状腺ホルモン(T_3 )を例として調べた. 本ホルモンはエネルギー代謝を調節していることが知られているのでグルコースの消費量をホルモン作用の指標とした. T_3 を3.5×10^-8 Mの濃度で加えて4日間培養する(細胞数4.8×10^5 )とホルモン無添加の対照値131μg(消費量)に対してホルモン処理群では約その倍の297μgの消費がみられた. 血清添加群では558μgであった. この時, ホルモンによって^14 C-プロリンの高分子蛋白質への取り込みも無処理群に比べて2倍に高まっていることがわかった. ところがこの値は血清添加細胞に比べると, 約30分の1という低い値であった. 細胞分裂は起こっていない静止期の細胞での実験であるので, 血清中のある因子が蛋白合成活性化に関与しているらしい. 文献 1)林泉, G. H. Sato:科学, 48:33, 1978. 2)Samuels, H. H. , Tsai, J. S. and Cintron, R. :Science, 181:1253, 1973. 3)Tsai, J. S. and Chen, A. :Science, 194:202, 1976.
ISSN:0916-572X