タイ国北部チェンマイ郡の肺癌罹患率の異なる2つの地区の家屋, 調理場の比較
タイ国北部に位置するチェンマイ州の肺癌年齢訂正罹患率は男女とも高く1), 1985年では10万人当たり男性34.5, 女性26.7であった. その後もチェンマイ州の肺癌年齢訂正罹患率は, 特に女性の間で, 年々増加しており, 1991年では49.5, 37.1, 1992年には47.7, 40.1となり, 肺癌は男女ともチェンマイ州での癌罹患の第1位である(1990年のタイ国全体の肺癌年齢訂正罹患率は男性で25.0, 女性で12.1). チェンマイ州における男性の肺癌の原因については, タイ国北部でよく吸われる手巻き自家製のキーオーと呼ばれるタバコにタールやニコチンが高濃度に含まれていることか...
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Veröffentlicht in: | 日本生理人類学会誌 1998-08, Vol.3 (3), p.119-126 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | タイ国北部に位置するチェンマイ州の肺癌年齢訂正罹患率は男女とも高く1), 1985年では10万人当たり男性34.5, 女性26.7であった. その後もチェンマイ州の肺癌年齢訂正罹患率は, 特に女性の間で, 年々増加しており, 1991年では49.5, 37.1, 1992年には47.7, 40.1となり, 肺癌は男女ともチェンマイ州での癌罹患の第1位である(1990年のタイ国全体の肺癌年齢訂正罹患率は男性で25.0, 女性で12.1). チェンマイ州における男性の肺癌の原因については, タイ国北部でよく吸われる手巻き自家製のキーオーと呼ばれるタバコにタールやニコチンが高濃度に含まれていることから喫煙との関係が疑われているが2), この地方の女性の高い肺癌罹患率の原因についての研究は無い, 人の発ガンには様々な要因が示唆されているが, 特に肺ガンでは喫煙, 食生活, 大気汚染など生活環境要因が大きいと考えられる. そこで, 我々は1995年からタイ国北部チェンマイ(Chiang Mai)市近郊の女性肺癌罹患率の高いサラピー地区(Saraphi)とその対照地区としてのジョントン地区(Chom Thong)の2地区に住む50才以上74才(多くは55才から65才)の高齢女性の生活スタイルに関して質問票により調査を行い, 併せて陰膳による食事サンプルの採取, 各家屋内のair checkerによる環境微生物の採取などを行ってきた. 陰膳により採取した食事サンプルから推定した2地区の食生活については先に発表した3). これを要約すると, 両地域とも蒸したもち米, 豚肉, 野菜を主食としているが, サラピー地区ではジョントン地区に比べ果物の摂取量が少なく, また種類も少なかった. 野菜についてはその摂取量に違いはなかったが, 摂取された緑黄色野菜の種類が, サラピー地区ではジョントン地区に比べ少なかった. これらの果物, 野菜の摂取の相違は, タイ国北部のような低開発地域で2つの地区の肺癌罹患率に差を生じた一つの原因と考えられる. ここでは肺癌罹患率の相違に関連して, 両地域の環境要因の違い, 特に住居の形態, 家屋内の気温, 湿度などの住環境と調理場に関する調査についてその概要を報告する. |
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ISSN: | 1342-3215 |