上咽頭癌に対する放射線治療後に晩期下位脳神経障害による嚥下障害をきたした 1例
【緒言】上咽頭癌に対する放射線治療の 14年後に,下位脳神経障害による嚥下障害をきたした症例を経験したので報告する.【症例】 38歳,男性. 21歳時に上咽頭癌に対し化学療法および放射線治療が施行された. 35歳時より嚥下困難感, 36歳時より構音障害が出現し,以後発熱を繰り返すようになった. 38歳時に誤嚥性肺炎と診断され呼吸器内科に入院した.【経過】舌右側の萎縮(右舌下神経麻痺),右咽頭の軽度感覚低下(右舌咽神経麻痺)を認めた.また,唾液腺分泌障害が認められ,齲歯および歯周病により臼歯が喪失していた.抗生剤による治療および間接嚥下訓練を開始した.嚥下造影検査では咽頭残留を認め,食物は咽頭の...
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Veröffentlicht in: | 日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 2018/08/31, Vol.22(2), pp.161-166 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
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Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【緒言】上咽頭癌に対する放射線治療の 14年後に,下位脳神経障害による嚥下障害をきたした症例を経験したので報告する.【症例】 38歳,男性. 21歳時に上咽頭癌に対し化学療法および放射線治療が施行された. 35歳時より嚥下困難感, 36歳時より構音障害が出現し,以後発熱を繰り返すようになった. 38歳時に誤嚥性肺炎と診断され呼吸器内科に入院した.【経過】舌右側の萎縮(右舌下神経麻痺),右咽頭の軽度感覚低下(右舌咽神経麻痺)を認めた.また,唾液腺分泌障害が認められ,齲歯および歯周病により臼歯が喪失していた.抗生剤による治療および間接嚥下訓練を開始した.嚥下造影検査では咽頭残留を認め,食物は咽頭の左側を通過していた.肺炎が軽快した時点で耳鼻咽喉科に転科した.嚥下内視鏡検査では,喉頭閉鎖不全と右喉頭麻痺(右舌咽神経麻痺・迷走神経麻痺)を認めた.直接嚥下訓練を開始し,頸部回旋嚥下といった姿勢調節を行った.また,栄養サポートチーム(NST)が介入し,咀嚼および嚥下のしやすい食物(日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2013のコード 3に相当)の提供にて食事摂取が可能となった.【考察】上咽頭癌に対する放射線治療後の晩期障害である下位脳神経障害(右舌下神経,右舌咽神経,右迷走神経)が嚥下障害の主な原因であると推察した.また,唾液腺分泌障害と歯牙喪失も,嚥下障害に関与しているものと思われた.嚥下造影検査および嚥下内視鏡検査による病態の把握,姿勢調節などの嚥下訓練および NST介入が経口摂取獲得に有効であった.本症例では幸いにも経口摂取が可能となったが,一般的に放射線治療後の晩期神経障害は緩徐進行性で難治性であることが多く,今後も長期の追跡が必要である.近年,上咽頭癌の治療として化学療法と放射線療法の併用療法が積極的に行われており,予後の改善と引き換えに晩期脳神経障害を背景にした嚥下障害が今後増加する可能性があることを,われわれは銘記する必要がある. |
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ISSN: | 1343-8441 2434-2254 |
DOI: | 10.32136/jsdr.22.2_161 |