1-3-2 呼吸器疾患周術期における嚥下機能評価の有用性

【目的】 高齢者は術後に致死的な周術期合併症である誤嚥性肺炎を発症する危険が比較的高い. 当院では, 周術期の嚥下機能評価と嚥下訓練による誤嚥性肺炎予防策を講じてきたので報告する. 【対象】 2008年4月から2009年10月までに当院で呼吸器手術が施行された患者のうち高齢者(75歳以上)ならびに脳血管疾患の既往を有する患者23例. 【方法】 術前に摂食・嚥下サポートチーム(SST)によって嚥下機能を評価し, 術後の経口摂取進行計画を策定した. 経口摂取再開時には再び同様の評価を実施し, 必要に応じて嚥下内視鏡検査(VE)を実施した. 嚥下機能評価にもとづいてSSTが誤嚥性肺炎予防の対策を実施...

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Veröffentlicht in:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 2010, Vol.14 (3), p.326-326
Hauptverfasser: 北川晶子, 宮村春菜, 阿部倫子, 水野幸太郎, 太田喜久夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:【目的】 高齢者は術後に致死的な周術期合併症である誤嚥性肺炎を発症する危険が比較的高い. 当院では, 周術期の嚥下機能評価と嚥下訓練による誤嚥性肺炎予防策を講じてきたので報告する. 【対象】 2008年4月から2009年10月までに当院で呼吸器手術が施行された患者のうち高齢者(75歳以上)ならびに脳血管疾患の既往を有する患者23例. 【方法】 術前に摂食・嚥下サポートチーム(SST)によって嚥下機能を評価し, 術後の経口摂取進行計画を策定した. 経口摂取再開時には再び同様の評価を実施し, 必要に応じて嚥下内視鏡検査(VE)を実施した. 嚥下機能評価にもとづいてSSTが誤嚥性肺炎予防の対策を実施し, 術後の誤嚥性肺炎の頻度をSSTの介入前と介入後で比較検討した. 【結果】 23例(75歳以上16例)のうち5例に術後に嚥下障害を認めた. いずれも術前では嚥下障害を指摘されていなかった. 4例中2例はVEにて食物誤嚥(DSS2)と診断され, 経腸栄養管理となった. SST関与以前(2005年1月~)は, 75歳以上高齢者194名中3例に術後誤嚥性肺炎を認めていたが, 周術期SST関与後には誤嚥性肺炎の合併は認められなかった. 【考察】 今回検討した75歳以上高齢者16例の25%に術後に嚥下障害が悪化する症例を認めた. いずれも, 呼吸器手術を受ける前までは自宅で通常の食事をしており, ムセなどの自覚症状もなかった. また, 術前のSSTによる嚥下機能評価でも嚥下障害は明確ではなかった. しかし, 今回の報告のごとく高齢者では呼吸器手術後に嚥下障害を併発もしくは悪化させる例があり, 術後には早期から嚥下機能の評価を実施する必要性があると考えられた. 術後の嚥下障害の原因については, 手術時の麻酔などによる侵襲などが報告されているが, 高齢者における術後肺炎は予後も不良であることから, その予防は高齢者呼吸器手術の周術期管理に重要である. 現在施行しているSSTによる周術期の嚥下機能評価は, 75歳以上の高齢者には必須であると考えられた.
ISSN:1343-8441