II-9-3 重度嚥下障害を呈した多系統萎縮症の3例

【はじめに】多系統萎縮症(MSA)は神経難病のひとつで, パーキンソニズムや小脳失調に加え, 自律神経症状を呈し, 比較的早期から発声困難や嚥下障害が目立つ疾患である. 重度嚥下障害を呈した3名のMSA患者について嚥下機能や経過を検討し, MSA患者の嚥下障害の程度と所見の特徴を明らかにすることを目的とした. 【症例1, 76歳女性】動作緩慢で発症, 2年後より食事のむせ, 1年後に肺炎を繰り返し経管栄養. 2年後に嚥下障害評価. ADLは日中臥床状態, 摂食嚥下障害の臨床的重症度分類(DSS)1, 改訂水飲みテスト(MWST)3, 反復唾液嚥下テスト(RSST)3回, 気管切開. 間接嚥下訓...

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Veröffentlicht in:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 2009, Vol.13 (3), p.472-472
Hauptverfasser: 望月千穂, 玉井敦, 武井洋一, 大原慎司, 松尾浩一郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:【はじめに】多系統萎縮症(MSA)は神経難病のひとつで, パーキンソニズムや小脳失調に加え, 自律神経症状を呈し, 比較的早期から発声困難や嚥下障害が目立つ疾患である. 重度嚥下障害を呈した3名のMSA患者について嚥下機能や経過を検討し, MSA患者の嚥下障害の程度と所見の特徴を明らかにすることを目的とした. 【症例1, 76歳女性】動作緩慢で発症, 2年後より食事のむせ, 1年後に肺炎を繰り返し経管栄養. 2年後に嚥下障害評価. ADLは日中臥床状態, 摂食嚥下障害の臨床的重症度分類(DSS)1, 改訂水飲みテスト(MWST)3, 反復唾液嚥下テスト(RSST)3回, 気管切開. 間接嚥下訓練を実施し3週後唾液の咽頭貯留増加, 経管栄養継続. 【症例2, 80歳男性】歩行時ふらつきで発症, 3年後より食事のむせ, 3年後に肺炎を繰り返し嚥下障害評価. ADLは車椅子移乗介助, DSS2, MWST3, RSST2回. 間接訓練と摂食を実施後発熱と肺炎で摂食中止. 【症例3, 78歳男性】動作緩慢で発症, 7年後より食事のむせ, 4年後にむせが目立ち嚥下障害評価. ADLは監視歩行, DSS2, MWST3, RSST3回. 間接訓練と摂食を実施し2週後唾液の咽頭貯留増加, 胃瘻造設, ペースト1/2食自力摂取と併用. メンデルソン手技でむせ減少. 【結果および考察】いずれも, VEで唾液咽頭貯留を中等量以上認め, 空嚥下で梨状窩の残留除去不良であった. また食物咽頭残留と嚥下後誤嚥, 誤嚥物喀出不良, 鼻咽腔閉鎖不全があった. 全例で痰増加, 胃食道逆流所見を認めた. 多系統委縮症は, 病状の進行に伴い食道入口部通過が重度に障害され, 咽頭残留除去が不良となる可能性が示唆された. その機序は今後検討していく必要がある. 嘔吐反射が保たれるため, 嘔吐や逆流, 唾液分泌を誘発しない対応が必要である. MSAの唾液増加の要因として, 唾液の嚥下困難と逆流が示唆された.
ISSN:1343-8441