II-P4-21 味覚障害におけるアイスキューブ刺激の効果

【はじめに】冷刺激により味覚障害の著明な回復を認めた症例を経験したので報告する. 【症例および経過】80歳女性で甘味が全くわからないことを主訴に長崎大学医学部・歯学部附属病院味覚外来に来院した. 味覚障害を誘発するような薬物や放射線療法などの既往歴はない. 嚥下機能のわずかな低下が観察され, 摂食・嚥下障害臨床的重症度分類のレベル6である軽度問題が見られた. また口腔内の乾燥は見られなかった. 全口腔法の変法であるテーストディスクを用いた滴下法にて詳しく調べてみたところ高濃度の甘味は酸味と感じ, 他の塩味, 苦味は濃度を上げるとそれぞれの味を識別できるが, 途中の段階では全て酸味と感じる錯味の...

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Veröffentlicht in:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 2008, Vol.12 (3), p.467-467
Hauptverfasser: 藤山理恵, 石飛進吾, 本多啓子, 前田香代子, 濱口盛子, 岡田幸雄, 大井久美子, 戸田一雄
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【はじめに】冷刺激により味覚障害の著明な回復を認めた症例を経験したので報告する. 【症例および経過】80歳女性で甘味が全くわからないことを主訴に長崎大学医学部・歯学部附属病院味覚外来に来院した. 味覚障害を誘発するような薬物や放射線療法などの既往歴はない. 嚥下機能のわずかな低下が観察され, 摂食・嚥下障害臨床的重症度分類のレベル6である軽度問題が見られた. また口腔内の乾燥は見られなかった. 全口腔法の変法であるテーストディスクを用いた滴下法にて詳しく調べてみたところ高濃度の甘味は酸味と感じ, 他の塩味, 苦味は濃度を上げるとそれぞれの味を識別できるが, 途中の段階では全て酸味と感じる錯味の症状がみられた, 異常の原因を調べる目的で味覚修飾物質であるミラクリンを含むミラクルフルーツを用いて味覚修飾効果を調べたところ, ミラクリンの効果は全く見られなかった. ミラクリンは健常者の口腔内に作用させると甘味受容体に作用し, 酸味を甘味に変える物質である. ミラクリンの効果がなかったことから本症例における甘味受容体の障害が強く示唆された. 外来にて1分間アイスキューブを口に含んだ後, 3分後に滴下法にて再検査を行ったところ, 塩味に著しい閾値の回復がみられ, 塩味における錯味も消失した. そこで毎食前, アイスキューブを口に含むよう指導したところ, 約2か月後には高濃度の甘味刺激をわずかではあるが識別可能となり, 約3か月後には四基本味すべての味を低濃度で識別可能となり, 錯味も全て消失した. 【考察】本症例から, アイスキューブによる冷刺激が味覚受容体の機能回復に有効であることが示唆された. 味覚障害は社会の高齢化により増加傾向にあり, QOLを考える上でも大きな問題である. しかし, 原因が特定できない味覚障害に対する治療法がない現状で, 本治療法は副作用もなく画期的な方法となりうる可能性がある.
ISSN:1343-8441