II-P3-1 食道切除再建術後に遅発性反回神経麻痺をきたした一例

「はじめに」食道切除再建術後に遅発性の両側反回神経麻痺および著明な不顕性誤嚥をきたした症例を報告する. 「症例」62歳男性. 食道癌に対しVATS補助下に食道亜全摘, 後縦隔経由胃管再建術が施行された. 術後は発声機能に問題なく自己喀痰も可能であったが, 術後3日目より自己喀痰困難となり, 術後4日目より嗄声が出現した. 「評価および経過」術後16日に初回評価. 口腔構音機能, 鼻咽腔閉鎖機能は良好. 最長発声持続時間(MPT)は3秒未満と低下し, また重度の気息性嗄声を認めた. 喉頭挙上距離, 速度, タイミングは乏しかった. 改訂水飲みテストで著明なむせを認めた. 顕性誤嚥と考え術後22日...

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Veröffentlicht in:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 2007, Vol.11 (3), p.367-367
Hauptverfasser: 沖田浩一, 八幡徹太郎, 上田佳史, 高橋友哉
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:「はじめに」食道切除再建術後に遅発性の両側反回神経麻痺および著明な不顕性誤嚥をきたした症例を報告する. 「症例」62歳男性. 食道癌に対しVATS補助下に食道亜全摘, 後縦隔経由胃管再建術が施行された. 術後は発声機能に問題なく自己喀痰も可能であったが, 術後3日目より自己喀痰困難となり, 術後4日目より嗄声が出現した. 「評価および経過」術後16日に初回評価. 口腔構音機能, 鼻咽腔閉鎖機能は良好. 最長発声持続時間(MPT)は3秒未満と低下し, また重度の気息性嗄声を認めた. 喉頭挙上距離, 速度, タイミングは乏しかった. 改訂水飲みテストで著明なむせを認めた. 顕性誤嚥と考え術後22日目よりゼリー食開始. むせがなく, 問題なしと考えていたが, 術後28日目の嚥下造影検査(VF)では嚥下反射の遅延および著明な不顕性誤嚥を認めた. したがってゼリー経口摂取はST監視下に限定し, 経管栄養を継続する方針とした. 術後41日より時々, 有声音混じりの会話となったが, MPTは変化しなかった. 術後44日目のVFで依然, 不顕性誤嚥を認めたが, 高粘稠性のトロミ水での誤嚥が減少していたため, ペースト食開始とした. 術後48日目より有声音が増加し, 術後52日目の5ccの飲水でむせが再び現れた. 術後62日目にMPT 6秒と向上し5ccの飲水が可能となった. 術後66日目にMPT 10秒程度に向上し, 術後71日目に30ccの飲水, 軟食経口摂取が可能となった. 「考察」本症例の障害の原因として, 術中の神経損傷は否定され, 発症メカニズムは不明であった. 術後数日から症状発現し, 約2ヶ月半の経過で自然回復したが, このような病態の文献は渉猟の限り見当らなかった. なお嚥下アプローチは, 術後なかなか食べられるようにならないことに対しての精神的サポートの効果があったと推察する.
ISSN:1343-8441