II-5-6 進行性球麻痺例におけるビデオ嚥下造影検査の意義

著明な嚥下障害を呈する両側性末梢性舌下神経麻痺1例と筋萎縮性側索硬化症(ALS)3例を経験した. これら運動ニューロン疾患における嚥下障害について特徴を比較検討した. 【対象と方法】著明な嚥下障害を呈する両側性末梢性舌下神経麻痺1例と, ALSと診断された3例を対象とした. 舌下神経麻痺例は72歳男性で約1年半前から構音障害と嚥下障害を自覚するようになった. 四肢の運動障害はないが, 嚥下障害は進行憎悪している. 神経学的には両側性末梢性舌下神経麻痺のみを認めた. ALS例は60~70歳代の男女3名で, 3症例共ご飯食を摂っており嚥下障害の自覚はない. これら4例のビデオ嚥下造影検査(VF)所...

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Veröffentlicht in:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 2005, Vol.9 (3), p.382-382
Hauptverfasser: 下澤香織, 清水隆雄, 藤岡誠二, 野々村弘子, 大槻久美子, 近藤元治
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:著明な嚥下障害を呈する両側性末梢性舌下神経麻痺1例と筋萎縮性側索硬化症(ALS)3例を経験した. これら運動ニューロン疾患における嚥下障害について特徴を比較検討した. 【対象と方法】著明な嚥下障害を呈する両側性末梢性舌下神経麻痺1例と, ALSと診断された3例を対象とした. 舌下神経麻痺例は72歳男性で約1年半前から構音障害と嚥下障害を自覚するようになった. 四肢の運動障害はないが, 嚥下障害は進行憎悪している. 神経学的には両側性末梢性舌下神経麻痺のみを認めた. ALS例は60~70歳代の男女3名で, 3症例共ご飯食を摂っており嚥下障害の自覚はない. これら4例のビデオ嚥下造影検査(VF)所見等を比較検討した. 【結果】舌下神経麻痺例においては(1)舌運動障害による口腔相障害が著明, (2)咽頭反射出現の遅延と喉頭挙上範囲の制限があり食塊の残留が多い, (3)輪状咽頭筋の弛緩不全, (4)固形物よりも水様物で比較的嚥下しやすい等が認められた. 一方, ALSの3例においては(1)準備相や口腔相では障害は認められない, (2)嚥下反射の遅延と喉頭挙上の範囲制限は認められるが舌下神経麻痺例と比べてごく軽度, (3)3例中2例で軽度の輪状咽頭筋弛緩不全, (4)固形物より水様物で比較的嚥下しやすい等が認められた. 以上のように, 3例共四肢の筋萎縮や筋力低下があるにもかかわらず, 舌下神経麻痺例と比べて嚥下障害は軽度であった. これらのVF検査結果から舌下神経麻痺例は球麻痺の存在が指摘され, (1)症状が進行増悪していること, (2)画像所見で明らかな梗塞巣が認められないこと, (3)球麻痺症状以外の神経学的所見が認められないことからも, 進行性球麻痺であることが疑われた. 【考察】舌下神経麻痺例はVFを施行することにより初めて進行性球麻痺であると考えられた. 強い嚥下障害を示す症例にはVF検査を施行して嚥下機能を十分に評価することが必要であると考えられた.
ISSN:1343-8441