舌下神経麻痺患者に対する装具療法

今回, 我々は舌下神経麻痺患者に対し, 食物の送り込みおよび唾液の呑み込みの改善を目的とし, 上下顎2個の装具を作製し, 若干の知見を得た. 症例は66歳男性. 13年前, 咬頭癌のため咬頭摘出術施行. 96年11月, 食道上部に再発し, 腫瘍切除および放射線療法を受けた. 術後の全身状態良好. 両側の高度の舌下神経麻痺を認めた. 固形物は箸やスプーンを用いて口峡部に押し込み, 液体飲料は頸部を伸展する事により流し込んでいた. 舌は, ほとんど自動運動を認めず, 筋電図上は完全脱神経所見を示した. 唾液は粘稠で舌背部に停滞していた. 96年12月より, 口腔筋の機能訓練を行い, 97年2月,...

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Hauptverfasser: 奥井美枝, 才藤栄一, 水野雅康, 小口和代, 日比五郎, 後藤安利, 向井美惠, 佐藤園枝, 森啓子
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:今回, 我々は舌下神経麻痺患者に対し, 食物の送り込みおよび唾液の呑み込みの改善を目的とし, 上下顎2個の装具を作製し, 若干の知見を得た. 症例は66歳男性. 13年前, 咬頭癌のため咬頭摘出術施行. 96年11月, 食道上部に再発し, 腫瘍切除および放射線療法を受けた. 術後の全身状態良好. 両側の高度の舌下神経麻痺を認めた. 固形物は箸やスプーンを用いて口峡部に押し込み, 液体飲料は頸部を伸展する事により流し込んでいた. 舌は, ほとんど自動運動を認めず, 筋電図上は完全脱神経所見を示した. 唾液は粘稠で舌背部に停滞していた. 96年12月より, 口腔筋の機能訓練を行い, 97年2月, 上顎硬口蓋部および下顎舌側歯槽部にレジン床による装具療法を試みた. VF検査や実際の食事に使用し, 形態の調整を行った. 形態は, 上顎の床後縁を軟口蓋に延長し, 厚みは歯牙の高さに設定し, 下顎は口腔底側に厚みを設け, 舌を持ち上げる形態とした. 現在患者は, 唾液の飲み込みに効果があると自覚し, 装着している, 舌の運動障害がある場合, 固有口腔の死腔を減少させる目的で, 上下顎部の2つのスプリントを併用するという方法を開発し, 唾液の嚥下, 食塊の送り込みを容易にした. 今後このような症例では下顎部のスプリントは検討の価値があると考えている.
ISSN:1343-8441