高齢者の歩行自立度に対する下肢筋力および最大歩行速度の影響

これまでに歩行能力を規定する要因として膝伸展筋力の重要性が報告されている. しかし, 足底屈筋は立脚後期の下肢推進力として作用するにも関らず, 歩行能力との関連を報告したものは少ない. そこで今回, 在宅高齢者の膝伸展筋力, 足底屈筋力, 10m最大歩行速度に着目し, これらの要因が歩行能力にどのように関連しているのかを検討した. 埼玉県内の老人保健施設に通所中の在宅高齢者で, 下肢の運動機能に著明な左右差を有さず, かつ少なくとも屋内歩行が自立している者56名, 性別は男性10名, 女性46名, 平均年齢79. 9±7. 0歳であった. 足関節底屈筋力の測定はアニマ杜製ハンドヘルドダイナモメ...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2004, Vol.31 (suppl-2.2), p.523-523
Hauptverfasser: 小野塚直子, 杉本諭, 篠塚敏雄, 瀬戸一秀
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:これまでに歩行能力を規定する要因として膝伸展筋力の重要性が報告されている. しかし, 足底屈筋は立脚後期の下肢推進力として作用するにも関らず, 歩行能力との関連を報告したものは少ない. そこで今回, 在宅高齢者の膝伸展筋力, 足底屈筋力, 10m最大歩行速度に着目し, これらの要因が歩行能力にどのように関連しているのかを検討した. 埼玉県内の老人保健施設に通所中の在宅高齢者で, 下肢の運動機能に著明な左右差を有さず, かつ少なくとも屋内歩行が自立している者56名, 性別は男性10名, 女性46名, 平均年齢79. 9±7. 0歳であった. 足関節底屈筋力の測定はアニマ杜製ハンドヘルドダイナモメーターμTasMF-01を自作の足関節固定台に取り付け, 膝伸展, 足底背屈0度にて等尺性収縮を行った. 膝伸展筋力の測定はベッド上に背もたれなしの腰掛け坐位で腕組みをとらせ, 下腿下垂位にて等尺性収縮を行った. いずれの測定も30秒の休息を入れて片脚4回施行し, 最大値を体重で除し体重に対する割合を算出し, 左右の平均を求めた. 10m最大歩行速度は「出来るだけ速く歩いて下さい」と指示し, 2回のうち速度の速い方を採用した. 歩行能力はFunctional Independence Measure(HM)に基づき, 7(屋外独歩), 6(屋外杖歩行自立), 5(屋内自立)の3段階とした. 以上の測定を基に, 10m最大歩行速度, 膝伸展筋力, 足底屈筋力との相関を求め, 次いで3要因と歩行能力との関連についてクラスカルワーリス検定を用いて検討した. なお, 対象者には本研究の主旨を説明し, 同意を得て行った. 10m最大歩行速度と膝伸展筋力および足底屈筋力の相関係数はそれぞれr:-0.389, r=-0.421と有意差は見られたが相関はそれほど高くはなかった. 膝伸展筋力と足底屈筋力との相関は, r:0.578と歩行能力との相関に比べて高かった. 歩行能力との関係をみると, 10m最大歩行速度は5:20.7秒/10m, 6:13.3秒/10m, 7:8.14秒/10mと歩行能力が高いほど速度が速く, この差は有意であった. 次に膝伸展筋力および足底屈筋力と歩行能力の関係を見ると, 膝伸展筋力では, 5:28.9%, 6:35.4%, 7:37.7%, 足底屈筋力では5:21.6%, 6:289%, 7:32.7%と歩行能力が高い者ほど筋力が強く, 足底屈筋力において3群間に有意差を認めた. 以上の結果より歩行能力を改善するためには, 足底屈筋力の向上も考慮した理学療法プログラムを検討する必要があると推察された.
ISSN:0289-3770