カオス解析による病理的振戦の治療効果判定

パーキンソン病や本態性振戦の主要な兆候として振戦が挙げられる. 抗パ剤やβ遮断剤はこれらの振戦には有効とされている. また, 薬の長期投与による副作用の出現や薬に反応しない難治性の振戦も報告されている. これらの難治性の症例に対しては視床腹内側核破壊術(Vim-thalamotomy)が効果的である. しかし, その効果を定量的に評価した報告は少ない. 臨床的にはUnified Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS)などを用いて振戦を主観的にスコアー化して評価している現状である. そこで, 今回我々はVim-thalamotomyの手術効果を定...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2004, Vol.31 (suppl-2.2), p.456-456
Hauptverfasser: 真壁寿, 苗鉄軍, 坂本和義, 水戸和幸, 三和真人, 山路雄彦
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:パーキンソン病や本態性振戦の主要な兆候として振戦が挙げられる. 抗パ剤やβ遮断剤はこれらの振戦には有効とされている. また, 薬の長期投与による副作用の出現や薬に反応しない難治性の振戦も報告されている. これらの難治性の症例に対しては視床腹内側核破壊術(Vim-thalamotomy)が効果的である. しかし, その効果を定量的に評価した報告は少ない. 臨床的にはUnified Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS)などを用いて振戦を主観的にスコアー化して評価している現状である. そこで, 今回我々はVim-thalamotomyの手術効果を定量的に評価するために振戦のカオス性に着目し, 手術前後で振戦のダイナミクスがどのように変化するかを評価した. 振戦抑制の目的でVim-thalamotomyを施行したパーキンソン病患者(PD)7名, 本態性振戦患者(ET)3名, 計10名を対象とした(平均年齢58歳). 若年健康成人12名(平均年齢23歳)をコントロール群とした. 第2指遠位指節間関節に加速度センサー(MT-3T, Nihon Kohden)を取り付け, 振戦を測定した. 測定時間は1分間, 合計3回測定した. 振戦の測定は手術施行前, 施行後1ヶ月日に行った. サンプリング周波数250HzでAD変換し, 測定時間1分間の前後10秒間を除いた40秒間の時系列データ(データポイント数10000ポイント)を解析対象とした. 時系列データから時間遅れ法により状態空間の再構成を行い, 相関次元, 最大リアプノフ指数, シャノンのエントロピーを求めた. 手術前後でこれらの値がどのように変化するかを比較検討した. PDとET患者の相関次元の平均は手術施行前5.19±1.77, 施行後7.12±0.65でVim-thalamotomy施行後に有意に増加した. 最大リアプノフ指数は手術施行前12.07±8.25, 施行後1.64±1.77でVim-thalamotomy施行後に有意に減少した. エントロピーは手術施行前6.87±0.84, 施行後5.01±1.21に有意に減少した. コントロール群の相関次元, 最大リアプノフ指数, エントロピーは, それぞれ7.26±0.61, 2.31±2.64, 4.94±1.21であった. 最大リアプノフ指数, エントロピーは振戦のダイナミクスを記述し, 振戦の系の不安定性を表す. 相関次元は振戦の状態変化に寄与している変数の数, すなわちその自由度を表す. 手術後, 振戦の不安定性は減少し, 自由度は増加し正常者と同レベルに回復したことを意味する. 以上の結果より, 振戦のカオス性を記述する3つの量は, Vim-thalamotomyの効果判定に有益な特徴量であると考えられた. Vim-thalamotomyにおける振戦の抑制効果判定にはカオス解析が有益であった.
ISSN:0289-3770