当院精神科病棟における転倒調査について
厚生労働白書によると, 平成12年のわが国の精神科病床における平均在院日数は376. 5日であり年々短縮傾向にあり, 欧米と比較して極めて長期である. また入院患者の約半数が5年, 3分の1が10年を超える長期入院者であり, 更に65歳以上の入院患者が全体の324%を占めるとされ, 精神科における長期入院患者の高齢化が大きな問題になっている. このような入院の長期化に伴う活動制限による廃用症候群が加齢による身体機能低下に拍車をかけ, 院内生活において容易に転倒を引き起こし寝たきりに至るケースも少なくない. 一方わが国において, 精神科入院患者は未だ積極的な理学療法の対象になっているとは言い難く...
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Veröffentlicht in: | 理学療法学 2004, Vol.31 (suppl-2.2), p.391-391 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 厚生労働白書によると, 平成12年のわが国の精神科病床における平均在院日数は376. 5日であり年々短縮傾向にあり, 欧米と比較して極めて長期である. また入院患者の約半数が5年, 3分の1が10年を超える長期入院者であり, 更に65歳以上の入院患者が全体の324%を占めるとされ, 精神科における長期入院患者の高齢化が大きな問題になっている. このような入院の長期化に伴う活動制限による廃用症候群が加齢による身体機能低下に拍車をかけ, 院内生活において容易に転倒を引き起こし寝たきりに至るケースも少なくない. 一方わが国において, 精神科入院患者は未だ積極的な理学療法の対象になっているとは言い難く, 長期入院患者の加齢や身体機能の低下による転倒の予防対策が急務とされている. そこで今回, 効果的な転倒予防策のための基礎資料を得ることを目的として, 当院の精神科病棟における転倒についての調査を実施したので報告する. 対象は, 当院精神科病棟(閉鎖型男女混合病棟)において平成15年4月から6ヵ月以上入院している精神疾患患者のうち病棟内独歩を許可されている24名(男性14名, 女性10名)とした. 調査項目は, 年齢, 身長, 体重, BMI, 疾患名, 既往歴, 罹病年数, 入院歴, 抗精神病薬抗不安薬処方量, 活動状況, 転倒状況とし, 診療録より後方視的に行った. なお転倒状況は, 平成15年4~10月までの6ヵ月間の転倒回数発生状況, 外傷骨折の有無, 転倒時の精神状態について調査を行った. 分析方法は, 転倒の有無により転倒群と非転倒群に分け, 各項目について2群間の比較をおこなった. 統計的手法にはMann WhitneyのU検定を用いて危険率5%未満を有意水準とした. 調査期間中に24名中7名(29.2%)が転倒を経験していた. 7名の内訳は, 男性3名(42.9%), 女性4名(57.1%), また複数回転倒者は5名(71.4%;男性3名, 女性2名)であり, 転倒回数は2~5回であった. 外傷は男性2名のみで骨折はなかった. さらに各調査項目における転倒群と非転倒群との比較においては, 年齢にのみ有意差が認められた(転倒群62.3±8.5歳, 非転倒群48.8±14.6歳). 転倒場所については, 病室5回, トイレ5回, 廊下4回, デイルーム3回, 場所不明1回(延べ転倒回数)であり, 転倒時の精神状態はほぼ全例で通常と変化が無かった. 今回の調査では, 対象者の3人に1人が転倒を経験しており, 転倒経験者は非転倒経験者に比べて年齢が高いことがわかった. また, 同一症例が複数回転倒する傾向にあり, 転倒を経験した症例は再度転倒する危険性が高いことを示唆するものと思われた. 今後は転倒例の身体機能面における特徴から転倒要因の推定を行うとともに, 同一症例における再度転倒の回避に向けたアプローチが必要と思われる. |
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ISSN: | 0289-3770 |