高齢者の振り向き動作における下肢回旋運動の検討
本研究は高齢者の振り向き動作を分析し, 骨盤回旋に伴う下肢回旋運動と床反力作用点の関係を調べ, なぜ高齢者が振り向き動作時に転倒しやすいのかを考察した. 対象は高齢者(以下高齢群)15名(男性5名, 女性10名, 平均年齢69. 6±1. 5歳)とした. また対照群は若年者(以下若年群)15名(男性5名, 女性10名, 平均年齢24. 2±7. 3歳)とした. 運動課題は, 立位姿勢より足底面を床から離さず, 後方を見るように体全体を左に回旋させた. 標点を上前腸骨疎, 大腿外側部, 膝関節, 下腿外側部, 第2中足骨頭, 外果, 踵骨に貼付し, 動作中の標点の三次元位置を三次元動作解析装置(...
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Veröffentlicht in: | 理学療法学 2004, Vol.31 (suppl-2.2), p.382-382 |
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Hauptverfasser: | , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 本研究は高齢者の振り向き動作を分析し, 骨盤回旋に伴う下肢回旋運動と床反力作用点の関係を調べ, なぜ高齢者が振り向き動作時に転倒しやすいのかを考察した. 対象は高齢者(以下高齢群)15名(男性5名, 女性10名, 平均年齢69. 6±1. 5歳)とした. また対照群は若年者(以下若年群)15名(男性5名, 女性10名, 平均年齢24. 2±7. 3歳)とした. 運動課題は, 立位姿勢より足底面を床から離さず, 後方を見るように体全体を左に回旋させた. 標点を上前腸骨疎, 大腿外側部, 膝関節, 下腿外側部, 第2中足骨頭, 外果, 踵骨に貼付し, 動作中の標点の三次元位置を三次元動作解析装置(VICON612VICON Motion System)で計測した, 得られたデータからVICONPlugInGaitにより骨盤, 股関節, 膝関節, 足関節の回旋角度及び回旋モーメントを算出した. さらに床反力作用点(以下COP)を床反力計(AMTI)で計測した. 各関節の回旋角度は静止立位からの回旋変化量として算出し, 2群間の比較を行なった. 1. COP軌跡:若年群のCOP軌跡は, 全ての被験者で骨盤の回旋に伴い右前方へ移動した. 一方, 高齢群のCOP軌跡は, 10名の被験者が若年群同様に右前方へ移動し, 5名の被験者では左後方へ移動した. この結果より, 高齢群を若年群同様のパターンを示す群(A群)と, 左後方へ移動する群(B群)に追加分類して, 関節角度と回旋モーメントの比較を行った. 2. 関節角度:高齢A群, B群で左足関節内転角度が若年群と比べて著明に減少していた. その他の関節角度に著明な相違は認められなかった. 3. 回旋モーメント:若年群と比較して高齢群では, 左下肢各関節モーメントと右股関節回旋モーメントが減少していた. さらに高齢B群は, 他の2群に比べ右下肢各関節での回旋モーメントの減少が著明であった. 下肢回旋角度, COP, 回旋モーメントに関して若年群と高齢A群は類似したパターンを示した. 一方, 高齢B群は骨盤の左回旋に伴って荷重が左後側へ変位し, 右下肢を利用しないパターンを示した. この結果は, 高齢B群では振り向く際に重心が片側後方へ移動するという若年群および高齢A群に比べてより不安定な状態を呈することを示している. つまり, 高齢B群は支持基底面とCOPの関係から, 転倒のリスクが他の2群と比べて大きいといえる. 下肢関節の回旋変化量に大きな相違が認められないにも関わらず若年群および高齢A群より不安定な状態を生じたことは, 下肢関節よりも上位の体幹の回旋運動に相違があるか, または対側の股関節周囲筋力が支持脚として不十分であったという可能性が考えられる. 本研究結果より, 高齢者の振り向き動作において, 転倒予防として対側下肢の運動機能の重要性が示唆された. 今後さらに身体形態的特徴を把握し, それらとの関連性を検討していきたい. |
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ISSN: | 0289-3770 |