血液透析患者の歩行能力低下を規定する因子の検討
血液透析(HD)患者において, 身体活動量はADLやQOLの維持向上に重要な因子のひとつであることが報告されている. 我々は先行研究において, HD患者の身体活動量に影響を及ぼす因子として歩行能力をあげ, 身体活動量を維持向上するためには歩行能力の低下を予防する必要があることを示した. そこで本研究では, HD患者の歩行能力低下を予防するための効果的なアプローチ法を確立する一環として, HD患者の歩行能力を6ヶ月間縦断的に評価し, 歩行能力低下を規定する因子を検討した. 対象は外来通院可能なHD患者49例(男性10例, 女性39例)で, 平均年齢59.3±10.4歳, 平均透析期間8.3±7....
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Veröffentlicht in: | 理学療法学 2004, Vol.31 (suppl-2.2), p.331-331 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 血液透析(HD)患者において, 身体活動量はADLやQOLの維持向上に重要な因子のひとつであることが報告されている. 我々は先行研究において, HD患者の身体活動量に影響を及ぼす因子として歩行能力をあげ, 身体活動量を維持向上するためには歩行能力の低下を予防する必要があることを示した. そこで本研究では, HD患者の歩行能力低下を予防するための効果的なアプローチ法を確立する一環として, HD患者の歩行能力を6ヶ月間縦断的に評価し, 歩行能力低下を規定する因子を検討した. 対象は外来通院可能なHD患者49例(男性10例, 女性39例)で, 平均年齢59.3±10.4歳, 平均透析期間8.3±7.0年であった. ベースライン時の調査では, 患者背景因子として年齢, 性別, 透析期間, 身体組成(身長, dry weight, BMI), 血液検査所見(血清アルブミン値:alb, 血清ヘマトクリット値:Ht), また腎疾患特異的QOL尺度であるKDQOL-SF TMの下位尺度項目のうち, 痛み痒みなどHD患者特有の症状の程度を表す「症状」を調査した. 運動機能は柔軟性(SLR, 足関節背屈角度), 下肢筋力(等尺性膝伸展筋力), バランス(functional reach test, 片脚立位時間), 歩行能力(10m最大歩行速度)をベースライン時と6ヵ月後の2回測定した. 解析方法は, 6ヵ月後の10m最大歩行速度をベースライン時の10m最大歩行速度で除した値を歩行能力変化率として算出し, 歩行能力変化率を目的変数, ベースライン時の患者背景因子と症状および歩行能力以外の運動機能の各指標を説明変数とした重回帰分析を行った. 危険率5%未満を有意水準とした. 重回帰分析の結果, 歩行能力低下を規定する因子として下肢筋力, Ht, 症状が有意な因子として抽出された(重相関係数R=0. 66, P<0. 05). HD患者では重症貧血が持続すると組織の酸素代謝異常によって身体活動が抑制され, また症状は身体活動量や運動機能を低下させる. 運動機能, 特に歩行能力が低下すると身体活動量が制限されるばかりでなく, 外来通院が困難となり, さらに身体活動量やQOLが低下することが予測される. そこで歩行能力低下を規定する因子を検討したところ下肢筋力, Ht, 症状が有意な因子として抽出され, 定期的な下肢筋力の評価アプローチにより歩行能力の低下を予防する可能性が示唆された. HD患者の腎性貧血や症状の程度を考慮したうえで下肢筋力に対してアプローチしていくことがHD患者の歩行能力, さらには身体活動量の維持向上に重要であると考えられた. HD患者において下肢筋力の維持向上により歩行能力低下を予防する可能性が示唆された. |
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ISSN: | 0289-3770 |