脳卒中片麻痺患者の肩の痛みに対するDNICに基づくアプローチの試み

脳卒中片麻痺患者(以下, CVA患者)の中で肩に痛みを訴える症例は多く, 理学療法を遂行する上で阻害因子となることが多い. 高田らは, 第38回日本理学療法学術大会において整形疾患の痛み痺れに対するDMCアプローチの有効性を示唆した. そこで今回我々は肩関節運動時痛を訴えるCVA患者に対して, 痛みの軽減と関節可動域(以下, ROM)の増大を目的にDNICアプローチを試みたので報告する. DNICアプローチとは, 1979年Daniel Le Barsらによるラットの実験結果(広作動域ニューロンにC線維が興奮する電気刺激を加えて誘発されるニューロンの発射が, 他の受容器に与えられた侵害刺激によ...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2004, Vol.31 (suppl-2.2), p.302-302
Hauptverfasser: 立石学, 佐藤成登志, 長岡輝之, 山崎直美, 遠藤剛, 矢澤由佳里, 関清美, 長谷川琴江, 酒井規宇, 清水広記, 佐藤美緒子, 村崎陽子, 中野昭二, 高田治実
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:脳卒中片麻痺患者(以下, CVA患者)の中で肩に痛みを訴える症例は多く, 理学療法を遂行する上で阻害因子となることが多い. 高田らは, 第38回日本理学療法学術大会において整形疾患の痛み痺れに対するDMCアプローチの有効性を示唆した. そこで今回我々は肩関節運動時痛を訴えるCVA患者に対して, 痛みの軽減と関節可動域(以下, ROM)の増大を目的にDNICアプローチを試みたので報告する. DNICアプローチとは, 1979年Daniel Le Barsらによるラットの実験結果(広作動域ニューロンにC線維が興奮する電気刺激を加えて誘発されるニューロンの発射が, 他の受容器に与えられた侵害刺激によって抑制される:DNICと名称)を基に行う徒手的な治療法である. 入院患者のうち上肢Brunnstrom stage4~5で, かつ高次脳機能障害のないCVA患者5名(男性3名女性2名), 診断名は脳梗塞3名脳出血1名くも膜下出血1名, 平均年齢67. 2±9. 4歳を対象とした. 僧帽筋上部棘上筋棘下筋大円筋小円筋三角筋肩甲下筋大胸筋を触診押圧し圧痛を訴えた筋に対してDNICアプローチを一度施行し, 治療前後の肩関節屈曲伸展外転外旋のROM(自動他動)を端坐位にて測定した. またROMは痛みが出現する角度までとした. 痛みはVisual analogue pain scale(以下, VAS)を用いて, 治療前後の圧痛運動時痛(自動他動)の変化を測定した. 自動ROMの平均増大角度は屈曲10. 0度, 伸展7. 0度, 外転19. 0度, 外旋2. 0度であった. 他動ROMの平均増大角度は屈曲13. 0度, 伸展6. 0度, 外転11. 0度, 外旋2. 0度であった. また圧痛は僧帽筋上部3例, 疎上筋5例, 藤下筋5例, 小円筋2例, 肩甲下筋5例, 大胸筋2例に認め, 治療後VASは平均90%改善した. 運動時痛(自動他動)は屈曲4例, 伸展2例, 外転5例, 外旋3例に認め, 治療後VASは平均85%改善した. CVA患者の肩関節運動時痛の原因は, 筋緊張や筋力のアンバランスな状態で運動を続けた結果, 特定の肩関節周囲筋が過緊張となったためと考えられる. さらに痛みによる筋スパズムも過緊張を強める要因と考える. これらの過緊張や筋スパズムに対してDNICアプローチを行う事により, 痛みが軽減されROMが改善したものと考える. CVA患者の肩関節の痛みの原因は多種多様であり, 多くの要因が絡み合いひとつに特定することは難しい. 筋筋膜性の痛みを軽減するDNICアプローチは, 痛み発生原因を探る手段の一助にもなると考えられる. 今回の結果より, 脳卒中片麻痺患者の肩関節運動時痛に対するDNICアプローチの有効性が示唆された. 今後は症例数を増やし, さらに有効性を検討したい.
ISSN:0289-3770