393 半側空間無視が歩行自立度に与える影響

当院回復期リハビリテーション(以下回復期リハ)病棟においては, 入院早期から生活場面に日常生活動作(以下ADL)訓練を積極的に導入し「できるADL」と「しているADL」の乖離を早期に解消することを目標としている. しかし, 理学療法(以下PT)部門において「できる歩行」を「している歩行」に般化できない症例を経験した. 脳卒中後の片麻痺患者の移動能力に影響を及ほす因子についての研究は数多くあるが, 実用的な歩行能力と半側空間無視(以下USN)の関連性についての研究は少ない. 今回, 当院回復期リハ病棟において, PT室内での歩行が自立した症例にとって歩行をADLに般化できない背景にはUSNが関与...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2004, Vol.31 (suppl-2.1), p.197-197
Hauptverfasser: 濱中康治, 小林修二, 藤井伸一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:当院回復期リハビリテーション(以下回復期リハ)病棟においては, 入院早期から生活場面に日常生活動作(以下ADL)訓練を積極的に導入し「できるADL」と「しているADL」の乖離を早期に解消することを目標としている. しかし, 理学療法(以下PT)部門において「できる歩行」を「している歩行」に般化できない症例を経験した. 脳卒中後の片麻痺患者の移動能力に影響を及ほす因子についての研究は数多くあるが, 実用的な歩行能力と半側空間無視(以下USN)の関連性についての研究は少ない. 今回, 当院回復期リハ病棟において, PT室内での歩行が自立した症例にとって歩行をADLに般化できない背景にはUSNが関与しているのではないかと考え, 検討した. H14.7.1からH15.6.1までに当院に入院した脳卒中患者105例のうち, 疾患は脳梗塞と脳出血に限定し, 再発, 両半球障害は除外, 入院後3ヶ月間継続してPTを実施し, 町室歩行が自立した42例を対象とした. 性別は男性25例, 女性17例, 年齢は65.9±12.8歳, 発症から入院までの期間は1.2±0.8ヶ月, 診断名は脳出血17例, 脳梗塞25例, 損傷側は右半球21例, 左半球21例であった. 入院3ヶ月後の歩行自立度を, PT室での歩行は自立したが, 病棟では監視歩行または車椅子使用にとどまった群(以下PT室歩行自立群)と, 病棟での歩行自立まで至った群(以下病棟歩行自立群)の2群に分類した. USNに関しては入院時と3ヶ月時に机上検査を行い, USNの有無と重症度を9段階で評価した. 検査には線分末梢, 線分二等分, 図形模写の3検査を用い, 重症度判定は森田ら1}の方法を採用した. 歩行自立度とUSNの有無重症度の相関をSpearmanの順位相関を用い検定した. 次に, PT室歩行自立群と病棟歩行自立群に対するUSNの判別帰与率をロジスティック回帰分析を用いて算出した. 3ヶ月時の歩行自立度と入院時のUSNの有無重症度間には有意な相関は認められなかったが, 3ヶ月時のUSNの有無重症度間には有意な相関が認められた. また, 病棟歩行自立の可否におけるUSN有無の判別帰与率は10. 8%, 重症度の判別帰与率は14. 4%であった. 今回の検討結果から, 入院時のUSN有無重症度は3ヶ月時に病棟歩行が自立するか否かの判別要因としては抽出されず, 3ヶ月時のUSNが阻害因子として関与していることが明らかになった. しかし, ロジスティック回帰分析の結果から, 病棟歩行の可否におけるUSNの影響はさほど高くはなく, 他の因子が大きく関与していることが示唆された. この点の解明については今後の課題としたい.
ISSN:0289-3770