255 理学療法士の立場から関わった千葉県建築物ユニバーサルデザイン推進事業の一経験

理学療法士は生活環境支援に関わるさまざまな役割を担う社会的責務がある. その範囲は個別的な住宅改修に留まらず, 広く障害者, 高齢者, 妊婦, こどもなどの弱者(以下障害者など)との共存社会を念頭に理学療法の専門的立場からまちづくりへの参画堤案も含まれると考える. しかしこれまでまちづくりに理学療法士が具体的に関わった事例はあまりなく, 専門家としての役割は未知数であり, これから開拓されるべき範疇にある. 筆者は理学療法士の立場から千葉県建築物ユニバーサルデザイン推進検討委員会(以下委員会)のメンバーとして活動する機会を得た. 本稿では, 活動の途中経過とこれまでの有益な経験から, まちづく...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2004, Vol.31 (suppl-2.1), p.128-128
1. Verfasser: 徳田良英
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:理学療法士は生活環境支援に関わるさまざまな役割を担う社会的責務がある. その範囲は個別的な住宅改修に留まらず, 広く障害者, 高齢者, 妊婦, こどもなどの弱者(以下障害者など)との共存社会を念頭に理学療法の専門的立場からまちづくりへの参画堤案も含まれると考える. しかしこれまでまちづくりに理学療法士が具体的に関わった事例はあまりなく, 専門家としての役割は未知数であり, これから開拓されるべき範疇にある. 筆者は理学療法士の立場から千葉県建築物ユニバーサルデザイン推進検討委員会(以下委員会)のメンバーとして活動する機会を得た. 本稿では, 活動の途中経過とこれまでの有益な経験から, まちづくりにおける理学療法士の役割について私見を述べる. 千葉県では平成15年から2ヵ月にわたり, 公共的な建築物の整備指針の策定や具体的な実行計画の提案を目的とした千葉県建築物ユニバーサルデザイン推進事業を進めている. 委員会は本事業の整備指針のあり方の提言や助言を目的に建築, 福祉, 理学療法などの有識者で構成されている. 筆者は県有の既存建筆物である千葉県立中央博物館(1989年開館)を対象にユニバーサルデザインの視点による調査に参加した. 調査は2003年11月7日に行い, 実際の障害者(弱視, 聴覚障害, 対麻痺のそれぞれ)とインスタントシニアや車椅子使用の健常者を含む35名でユニバーサルデザインの観点から博物館内外をくまなくチェックした. 調査後にワークショップ形式で建物のハード, ソフトに関する問題点を討議した. 問題点の抽出今回の調査では実際の障害者が参加しており, 説得力のある意見が多かった. 問題点を大別すると, 1)移動動線のバリアに関する事項(手すり, スロープ, アプローチ, 段差などの不備), 2)標示, サインに関する事項(男女のトイレの別が判りにくい, 標示の位置, 音声, 点字テープ, 点字ブロックなどの不備), 3)展示方法に関する事項(展示ケースの高さ, 音声, 点字, 字幕による展示内容の解説が未整備), 4)職員エリアの対応(車椅子利用の職員への配慮の不備), 5)避難計画に関する不備などであった. また, 子連れ客や妊婦にも使いやすいデザイン, おむつ交換の場所の確保など多角的な意見交換があった. ユニバーサルデザインはだれでも使いやすいというコンセプトである. これまで公共建築物やまちづくりで利用者の参加があまりないままにその計画が進められてきた経緯があったように思われる. まちづくりは多くの人の参加が必要であり, 計画段階から障害者などにも当然参加し発言できるようなシステムづくりが必要である. また, まちづくりにおける理学療法の専門性として, 個々の障害者などの発言を尊重しつつ, 客観的に障害者など一般が機能能力障害に関してどのような程度でどのような状況であるかというマクロな視点が必要であるように考える.
ISSN:0289-3770