筋線維伝導速度分布推定のための正規化ピーク平均法

【はじめに】前回, 筋疲労や筋疾患の評価を目的として, 筋線維伝導速度(以下MFCV)の新しい算出法である正規化ピーク平均法を提案した. それは, (1)アレイ電極列から記録した基準筋電図と比較筋電図を計算機に保存(2)基準筋電図から閾値以上のピークを検出して一定な振幅に正規化し, その前後区間を含めて重ね合わせ平均(3)比較筋電図の同区間も平均(4)算出された基準平均パルスと比較平均パルスの時間遅れを調べる方法, であった. 今回は複数の被験者から取り込んだ筋電図を用いて, この正規化ピーク平均法によるMFCV値と, 現在最も一般的に用いられ信頼性も高い相互相関法(以下CCT)によるMFCV...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2003-04, Vol.30 (suppl-2), p.263-263
Hauptverfasser: 西原賢, 久保田章仁, 井上和久, 田口孝行, 丸岡弘, 磯崎弘司, 原和彦, 藤縄理, 江原晧吉, 細田多穂, 熊井初穂, 山口明, 二見俊郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【はじめに】前回, 筋疲労や筋疾患の評価を目的として, 筋線維伝導速度(以下MFCV)の新しい算出法である正規化ピーク平均法を提案した. それは, (1)アレイ電極列から記録した基準筋電図と比較筋電図を計算機に保存(2)基準筋電図から閾値以上のピークを検出して一定な振幅に正規化し, その前後区間を含めて重ね合わせ平均(3)比較筋電図の同区間も平均(4)算出された基準平均パルスと比較平均パルスの時間遅れを調べる方法, であった. 今回は複数の被験者から取り込んだ筋電図を用いて, この正規化ピーク平均法によるMFCV値と, 現在最も一般的に用いられ信頼性も高い相互相関法(以下CCT)によるMFCV値を比較して両値の相関と大小関係を調べ, さらにCCTでは調べられないMFCV分布の算出可能性についても検討した. 【対象と方法】28歳から53歳(41±7.7歳)の健常成人男性4名, 女性3名に双極アレイ電極4対を左上腕二頭筋の神経筋接合部より1cm遠位部から末梢方向へ筋線維走行に沿って取り付けた. この際, 電極が腱と充分離れていることを触診で確認した. 肘屈曲30゜, 最大筋力の50%で等尺性肘屈曲運動を70秒間行った. 筋電図データの処理方法は, まず, 生体アンプで増幅した筋電図波形を4chの8,000samples/secのサンプリングレートでAD変換し, 計算機のハードディスクに保存した. 次に, 保存した筋電図を神経筋接合部に近い基準筋電図と遠い比較筋電図を1対にして5秒ずつ区切り, CCTと正規化ピーク平均法で基準筋電図と比較筋電図の時間遅れからMFCVを算出した. 基準筋電図と比較筋電図の時間遅れを調べる方法として平均パルス波形のピーク時点の時間遅れを調べる方法(以下P-NPAT)と, 平均パルス波形の相互相関を調べる方法(以下CC-NPAT)を用いた. 基準筋電図と比較筋電図それぞれの平均パルス波形の時間幅を調べるために拡散率も算出した. 【結果】P-NPATとCC-NPATによるMFCVはCCTによるMFCVと高い相関を示した. CCTによるMFCVと比べて, P-NPATによるMFCVは有意に高い値を示したが, CC-NPATによるMFCVは有意差がなかった. 平均パルス波形の拡散率は1.11±0.08とほぼ一定な値を示した. 【考察】正規化ピーク平均法によるMFCVは, CCTによるMFCVと相関が高く, CCTと同様にMFCVの算出に用いられると考えられる. 平均パルス波形の相互相関であるCC-NPATと, 筋電図の原波形のCCTであるCCTとの有意差がないことから, 複雑な干渉波の原波形よりも単純化された平均パルス波形を用いることにより両波形の時間遅れの様子を確認できることが示唆された. P-NPATによるMFCVとCC-NPATによるMFCVの値の差と拡散率を調べることでMFCV分布の偏りと拡散の程度が推定でき, 臨床応用が可能と考えられる.
ISSN:0289-3770