慢性関節リウマチのADLが肺機能に及ぼす影響

【目的】慢性関節リウマチ(以下RA)患者では, 肺疾患が発生する頻度は高いが, 関節病変によりADLが制限される為, 呼吸障害が初期の段階で自覚されにくい. しかし, 臥床を呈したりRAが重症化してくると, 呼吸器症状を訴える症例を目にする. RAにおける肺機能の低下は肺病変によるもの, 脊椎の変形によるものなどが原因と報告されている. しかし, これらの因子のみが肺機能を低下させていると考えにくく, 身体活動量が少なからず影響を与えるのではと考えた. そこで今回RA患者に肺機能検査を施行し, 身体活動量などが肺機能に与える影響について検討を行い, 若干の考察を加えて報告する. 【対象】H11...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2000, Vol.27 (suppl-2), p.352-352
Hauptverfasser: 黒島敬子, 小松智, 田口志津, 青柳孝彦, 中島宗敏, 千住秀明
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【目的】慢性関節リウマチ(以下RA)患者では, 肺疾患が発生する頻度は高いが, 関節病変によりADLが制限される為, 呼吸障害が初期の段階で自覚されにくい. しかし, 臥床を呈したりRAが重症化してくると, 呼吸器症状を訴える症例を目にする. RAにおける肺機能の低下は肺病変によるもの, 脊椎の変形によるものなどが原因と報告されている. しかし, これらの因子のみが肺機能を低下させていると考えにくく, 身体活動量が少なからず影響を与えるのではと考えた. そこで今回RA患者に肺機能検査を施行し, 身体活動量などが肺機能に与える影響について検討を行い, 若干の考察を加えて報告する. 【対象】H11月~5月に当院整形外科に入院したRA患者37名である(但し, RA発症前に呼吸器疾患の既往のある者は除く). 年齢は28~80歳(平均60.2±11.5歳), 性別は男性2名, 女性35名, RA罹病期間は1~38年(平均14.2±10.1年)であった. SteinbrockerのStage分類でStage I 4名, II 5名, III 9名, IV 19名であった. 【方法】ミナト社製オートスパイロメーターを用い肺機能検査を施行し, %肺活量(%VC)・%努力性肺活量(%FVC), 1秒量(FEV_1.0 ), 1秒率(FHV_1.0 %), %最大換気量(%MVV)を算出した. 各患者について, カルテより, (1)年齢(2)RA罹病期間(3)Stage分類(4)RAの活動性:ランズバリー指数の関節点数, リウマチ因子(RAHA, 抗核抗体)(5)炎症所見:CRP(6)貧血の有無(7)栄養状態:BMI(8)薬剤使用歴(抗RA剤の使用歴の有無, 1日のステロイド使用量)を調査した. 前面, 側面胸部X-P(一部CT)から(9)肺疾患の有無(10)胸郭変形の有無をチェックし, 頚椎X-Pから頚椎病変の有無を確認した. 問診にて(11)痛み(VAS), (12)ADL能力評価(藤林の分類):移動動作, 上肢動作, トイレ・入浴動作について評価した. なお統計学的分析に相関分析(単相関, スピアマン), 対応のないt検定を用い危険率5%で有意とした. 【結果及び考察】肺機能に影響を与えると考えられる因子(1)~(12)について統計学的に検討した所, 次の結集が得られた. 肺実質病変, 胸郭変形の有り群に呼吸機能が低下していた. またADL(移動動作, トイレ・入浴動作)と呼吸機能は正の相関が見られ, ランズバリー指数の関節点数と呼吸機能では負の相関が見られた. 他の項目には有意差は認められなかった. 以上のことから肺機能に影響を与える因子には, RAの活動性, 肺疾患, 胸郭変形, 身体活動量が挙げられる. 呼吸機能の低下に各因子がどの程度影響しているかは明らかではないが, RAの肺機能を維持するためには, RAの活動性をコントロールしながら, ADL, 胸郭などの姿勢アライメントの維持・改善することは重要であると思われる. RAのケアは, 関節外科的アプローチはもちろんの事, RAの重症化と共に肺疾患予防を目的とした内科的アプローチに加え, 運動機能維持目的の理学療法が必要であると思われる.
ISSN:0289-3770