Listeria-monocytogenesにより髄膜炎を呈した1症例の理学療法の経験
Listeria-monocytogenes(以下L.M)によるヒトへの感染は, 年平均20例程度, 1993年までに750例が報告されている. 成人では大部分が髄膜炎を発症し, 男性・40~50歳代に好発する. L.Mによる髄膜炎の臨床像として特徴的なものはなく, 稀に神経学的病巣徴候を示し, 予後は著しく不良である. 従って, 本菌により発症した障害に対しての理学療法の報告は極めて少ない. 今回我々は, L.Mによる髄膜炎により不全四肢麻痺・意識障害を呈した症例を経験した. 在宅復帰までの理学療法経過を考察を含めて報告する. 「症例」A.Y, 58歳, 男性. 「開始時所見」意識JCS I...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 理学療法学 2000, Vol.27 (suppl-2), p.299-299 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | Listeria-monocytogenes(以下L.M)によるヒトへの感染は, 年平均20例程度, 1993年までに750例が報告されている. 成人では大部分が髄膜炎を発症し, 男性・40~50歳代に好発する. L.Mによる髄膜炎の臨床像として特徴的なものはなく, 稀に神経学的病巣徴候を示し, 予後は著しく不良である. 従って, 本菌により発症した障害に対しての理学療法の報告は極めて少ない. 今回我々は, L.Mによる髄膜炎により不全四肢麻痺・意識障害を呈した症例を経験した. 在宅復帰までの理学療法経過を考察を含めて報告する. 「症例」A.Y, 58歳, 男性. 「開始時所見」意識JCS I~II桁, 上肢には僅かに随意性がみられたが, 下肢・体幹には随意性がみられなかった. 筋緊張は四肢にてrigospasticity様. 両下肢にては屈曲逃避反射(+). 両肩関節・上肢にROM制限があり, 脊椎(特に上部胸椎)のmobilityの低下がみられた. 起立性低血圧(+). 端座位保持・寝返り他不可能. 自己喀痰困難にて気管切開, 経鼻経管栄養中, 尿便意なく, ADLは全介助. 「退院時所見」意識JCS I-1. 起立性低血圧は改善. 四肢の随意性は上肢に改善がみられたが, 下肢には改善はみられない. ROM制限は改善傾向. 動作では上肢支持による寝返りと起きあがり, 端座位保持が僅かに可能になった. 自発性の低下・健忘症状が顕在化. 経口摂取・スプーンにての食事動作が一部可能になったが, 他のADLは全介助・車椅子レベルで在宅復帰した. 「経過と考察」意識は改善傾向であるが, 軽度の遷延性意識障害が残存した. 上肢の随意性には改善がみられたが, 下肢については改善がみられず, 屈曲逃避反射が残存する対麻痺様症状を呈した. 起立性低血圧・ROMは改善傾向にありdisuseと考えられた. 意識障害の軽減に伴い, 健忘症状・自発性の低下が顕在化し, ADLの阻害因子の1つと考えられた. 理学療法においては, 意識・自発性の賦活を考慮したprogramが必要と考えられた. 「まとめ」 1, L.Mによる髄膜炎により不全四肢麻痺・意識障害を呈した症例を経験した. 2, 不全四肢麻痺は上肢においては改善がみられたが, 下肢には改善がみられず, 屈曲逃避反射の残存する対麻痺様症状を呈した. 3, 食事動作に改善がみられたが, 他のADLは全介助レベルであった. 4, 遷延性意識障害・健忘症状・自発性の低下がみられ, ADL阻害因子の1つと考えられた. 5, 理学療法においては, 意識・自発性の賦活を考慮したprogramが必要と考えられた. |
---|---|
ISSN: | 0289-3770 |