介護保険施行後の機能訓練事業の方向性について

老人保健法の施行以来, 市町村で実施されてきた老人保健事業は, 閉じこもりによる心身の機能低下や寝たきり防止を目的として, 在宅要介護者を対象に, 保健婦や理学療法士(以下PT)が中心となって事業展開を図ってきた. 平成12年4月から介護保険制度が施行されることとなり, 従来から保健事業として行ってきたサービスと介護保険で行われていくサービスをどの様にとらえて事業展開を図っていくか検討することが必要である. そこで, 松山市の保健事業で行われる機能訓練教室の参加者について, 介護保険施行後の状況を推測し, 対象者のサービス利用の状況を予測するとともに保健事業として行う機能訓練の今後の方向性につ...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:理学療法学 2000, Vol.27 (suppl-2), p.278-278
Hauptverfasser: 金個亜紀, 金指巌, 黒川直樹, 武田士郎, 山本美和
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:老人保健法の施行以来, 市町村で実施されてきた老人保健事業は, 閉じこもりによる心身の機能低下や寝たきり防止を目的として, 在宅要介護者を対象に, 保健婦や理学療法士(以下PT)が中心となって事業展開を図ってきた. 平成12年4月から介護保険制度が施行されることとなり, 従来から保健事業として行ってきたサービスと介護保険で行われていくサービスをどの様にとらえて事業展開を図っていくか検討することが必要である. そこで, 松山市の保健事業で行われる機能訓練教室の参加者について, 介護保険施行後の状況を推測し, 対象者のサービス利用の状況を予測するとともに保健事業として行う機能訓練の今後の方向性について検討したので報告する. [対象と方法] 平成10年度2月に松山市で実施した機能訓練15会場での参加者のうちPTによる調査が可能であった209名を対象にした. 方法は平成10年度の要介護認定モデル事業で使用した基本調査用紙を用いてPTが聞き取り, 調査結果を要介護認定の1次判定で用いるコンピューターに入力して結果を求めた. さらに, 機能訓練会場までの通所方法, 保健事業以外の他サービスの利用状況等についても調査し, 1次判定結果と照らし合わせ検討した. [結果および考察] 介護保険サービスの対象となる要支援以上の判定となった者は174名で全体の83.3%, 自立と判定された者は35名で16.7%であった. 自立・要支援・介護度1で66%を占め, 比較的身体機能が残存し移動が可能な者が参加者の大部分を占めている状況であった. 介護保険に該当しない特定疾病以外の疾病を有する者は9名(4.3%)で, 自立判定の35名と合わせた44名(21.1%)が居宅サービスの利用対象外となる事がわかった. また, 現時点で保健事業以外の他サービス利用の有無を調査したところ, 74名(35.4%)が居宅サービスと保健事業の機能訓練を併用していた. 判定別のサービス利用の傾向としては自立や軽度障害者はデイサービス等や機能訓練への参加に意欲的で障害予防に対しての意識やニーズが高く, 逆に障害が重度だと介護負担軽減に対してのサービス需要が高いことがうかがえた. 会場まで自力通所可能な参加者は80名で全体の38.3%であり, なかでも自立・要支援・介護度1の者が90%を占め, 虚弱高齢者や軽度障害者が積極的に事業に参加している状況であった. 医療保険福祉審議会の報告においても寝たきり度判定Jランクの高齢者は自立度悪化予防傾向が大きいことが指摘されており介護保険施行後, 保健事業での機能訓練は従来のA型の事業を実施していくとともに, ADLが自立でありながら社会活動に乏しいJランクの高齢者等を対象とするB型の事業も積極的に推進していくことが重要である. 今後, 市町村で行う機能訓練は, 地域住民の保健・医療福祉サービスに対する需要を把握した上で, 従来の要介護レベルの対象者に加えて, 虚弱高齢者や軽度障害者とその家族も含めて, 障害や再発の予防, 健康教育や健康相談等, 健康的生活を保つという保健事業本来の目的に沿った幅広い事業展開を図るべきであるといえる.
ISSN:0289-3770