座位到達動作における対象物の性質や位置関係が姿勢調節に及ぼす影響

本研究の目的は, 座位到達動作課題を使用して, 到達させる対象物の性質や被験者との位置関係の変化が姿勢調節にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることである. 対象は健常若年者(以下, 健常者)12名と脳卒中片麻痺患者(以下, 片麻痺患者)8名とした. 健常者の内訳は, 男性6名, 女性6名であり, 平均年齢は20.3±1.1歳であった. 脳卒中片麻痺患者の内訳は, 男性2名, 女性6名であり, 平均年齢は57.6±18.2歳, Brunnstrom stageは上肢III6名, IV2名, 下肢III3名, IV5名であった. 床反力の測定には, 床反力計(キスラー社製水晶圧電式多成分フォー...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2000, Vol.27 (suppl-2), p.222-222
Hauptverfasser: 辻下守弘, 奈良勲, 鶴見隆正, 清水ミッシェルアイズマン
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:本研究の目的は, 座位到達動作課題を使用して, 到達させる対象物の性質や被験者との位置関係の変化が姿勢調節にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることである. 対象は健常若年者(以下, 健常者)12名と脳卒中片麻痺患者(以下, 片麻痺患者)8名とした. 健常者の内訳は, 男性6名, 女性6名であり, 平均年齢は20.3±1.1歳であった. 脳卒中片麻痺患者の内訳は, 男性2名, 女性6名であり, 平均年齢は57.6±18.2歳, Brunnstrom stageは上肢III6名, IV2名, 下肢III3名, IV5名であった. 床反力の測定には, 床反力計(キスラー社製水晶圧電式多成分フォースプレート9287A)を2枚使用した. 表面筋電図の測定には, 多用途生体アンプ(NECメディカルシステムズ社製BIOTOP 6R12)を使用した. 表面電極は, 到達動作を行う側の三角筋前部線維, 両側の大腿直筋と大腿二頭筋の合計5筋に設置した. また, 圧センサーとしてフットスイッチ2個を使用した. 対象者に指示した課題は, 座位姿勢のまま前方に置かれたコップを口に運ぶという到達動作であった. 使用したコップは, 重さと大きさの異なる2種類であり, コップの配置条件は, 体幹正中前方位(以下, 正中位), 肩関節45度水平外転位(以下, 外転位), そして肩関節45度水平内転位(以下, 内転位)とした. 測定した項目は, 到達動作を開始してからコップを取り上げるまでの時間, 両側の最大垂直反力, そして各筋における到達時間内の筋電活動量の積分値であった. 健常者と片麻痺患者各々の対象物と配置条件の二要因に関する分散分析の結果, 両群ともコップの違いに有意な主効果を認めた測定項目はなかったが, 健側三角筋の筋電活動量以外の測定項目において配置条件の違いによる5%水準以下の有意な主効果を認めた. また, 筋電活動量では, 全ての筋において外転位と正中位, 外転位と内転位に1%水準で有意差を認めた. 健常者における多重比較検定の結果, 到達時間では外転位と正中位, 正中位と内転位にそれぞれ5%水準で有意差を認め, 両側床反力では配置条件各々について1%水準で有意差を認めた. また, 筋電活動量では, 全ての筋において外転位と正中位, 外転位と内転位に1%水準で有意差を認めた. 片麻痺患者における多重比較検定の結果, 到達時間には配置条件各々に有意差を認めなかったが, 両側床反力では配置条件各々について1%水準で有意差を認めた. また, 筋電活動量において, 健側三角筋には有意差を認めなかったが, 健側の大腿直筋と大腿二頭筋において外転位と正中位, 外転位と内転位に5%水準で有意差を認め, 患側の大腿直筋と大腿二頭筋において配置条件各々について1%水準で有意差を認めた. 配置条件の変化については姿勢調節に影響を及ぼすことが明らかとなったが, 対象物の変化についてはその影響を明らかにするまでには至らなかった. しかし, 姿勢調節が配置条件の変化といった状況依存性に影響を受けることが示唆された.
ISSN:0289-3770